第15話 陰村の生活2

聖暦二三二三年十月


 七歳の秋になり薬草やキノコ、師匠の研究のため毒キノコの採取も俺の仕事になった。研究助手は週四日になり、残りの日は師匠に弁当を作ってもらって採取作業をしている。師匠は俺の知らない薬草の採取を行う時だけついてくる。

 深山に入るのは許可がいるとのことで、師匠とともに村長のところに行き挨拶をして許可を受けた。村長から俺が採取のため山に入るとの回状を回して周知してもらっているそうだ。腰には薬草等の採取許可証もつけている。


 裏山に分け入って採取をするのだ。深く山に入っていると何度か誰何を受けたが許可証を見せるとこれ以上進むなとの警告とともに解放された。度々あると許可範囲が自然と理解できるようになるので、その範囲を侵さないように採取を進める。

 俺はこの採取活動を身体強化のチャンスととらえて基礎体力を作ることにして素早く動くようにしている。


 そんなある日、魔力の塊が遠くに見えるので目を凝らしてみると樹木の根元で血を流して泣いている女の子を見つけた。口はママ、ママといっているように見える。


『ケガしているんだ』


 俺はまっすぐに女の子の方に駆けて行った。そばによると腕からかなりの血を流していた。木の枝に血の跡があったから木から落ちたんだろう。俺は採取駕籠に入れていた魔力ポーションを取り出し


「魔力ポーションだけど、飲んで!」栓を開けて渡した。

女の子は「ありがとう」


と小さな声で言って魔力ポーションをごくごく飲んでいた。


「木から落ちたんだね? ケガしているのは腕だけなの?」

「腕だけとおもうわ・・・」


 突然俺の周りに男の子が三人立っていた。


『全員魔力持ちだった。』


「おいお前何をしてるんだ?」

「何をしてるって? 俺はその子が怪我をしてるみたいだから 魔力ポーションを渡していただけだよ。 君たちこそ誰だい?」

「おいアミー! こいつに何かされなかったか?」

「なにもされてないよ。」

「こいつ!俺たちの訓練をスパイしに来たんじゃないか!」

「あっ! そうかも師匠がスパイに来る奴に注意しろって言ってたからな。」

「俺は薬草を取りに来ていただけだよ。」

「ぜってい変だぜ! ブラッド、スパイは殺してもいいんだよな。」

「こんなとこに普通の人間が来るはずはないからな!」

「俺は一度殺してみたいと思ってたんだ。」

「じゃあ殺すか?」


『なんでこんなことになるんだよ。逃げる一択だけど、逃がしちゃくれないよな。』


俺は集団からジリジリと下がっていった。そのとき


「お前ら何してんだ? いつもの訓練区域にいないから・・」

「師匠!こいつは俺たちの訓練を覗いていたみたいだ。」

「なんだって?」

「違いますよ俺は薬草を採取に来ていただけで、村長の許可証も持ってますよ。」

「許可証? 見せてみろ!」


俺は師匠と呼ばれていた男に薬草お採取許可証を渡した。

男は許可証を見て、


「お前はノエミのところのカミーか?」

「そうです。」

「お前ら安心しろこいつはスパイなんかじゃない。 魔なしだからな。魔力を持っていないのに訓練を見ても仕方がないだろう。」

「えっ!魔なしですか?」

「そうだ、それよりお前たちなんで訓練領域を離れたんだ?」

「それは・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「もういい! 帰るぞ!」

「小僧!悪かったな!こいつらも気が立っていたんだ。」

「さあ行くぞ!」


 集団が去っていった。俺は命拾いしたことに気がついた。師匠と呼ばれた男がいなければ俺は死んでいただろう。


 俺は強くならないとこの世界で生き抜いていけないと感じた日だった。

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