第12話 植物の魔力2

聖暦二三二一年十一月


 自分の魔力感覚を訓練することによって人の魔力は認識できるようになった。ただし、一メートル程だけど・・・

 それから何十日も努力したけど・・・

 魔力検知距離は多少伸びたけれど・・・

 植物の魔力の探知はだめだった!


 師匠が”用語対比一覧”を手にもってやってきた。


「カミー! ありがとう! 修正してくれていたのね!」


 師匠が俺の頭をなでてくれる。なんとなく嬉しくなる。


「それでね。お願いがあるのよ!」

「お願いですか???」

「そうよ!」


 師匠は俺を資料室に連れて行くと


「ここにあるのがあたしの研究資料なのよ!

それでね、これを整理してまとめて欲しいのよ!

お願いね!」


 俺はお願いされてしまった。

 断ることは不可能な”お願い”という強制依頼なのだった。


 何でも一年に一度、研究の経過報告を村長に提出するのと研究が完成した場合は”研究報告”にサンプルを添えて提出しなければならないらしい。まあ俺は過去世で経験があるから特に問題はないが・・・・


 というわけで俺の仕事に研究助手が加わった。薬草の世話と調剤の手伝いそれに研究助手というわけだ・・・


 この頃、気になっているのは魔力を放出するとき渦巻き状に放出され、一メートルほど先で拡散してしまうことだ。この拡散するのを何とかできないだろうかと考えた俺は丸めた魔力粘土を伸ばして棒状にしてみた。魔力棒を振り回してみる。その時・・、地面に魔力棒が触れたことがわかった。


『えっ! 地面に触れたのがわかったぞ?』


 目を開いてみると魔力棒の軌跡にあった薬草が萎びていた。


『しまった。失敗!失敗!』


 俺は魔力棒を五メートルほど伸ばして山肌に向けて振り回した。魔力棒が山肌に当たる辺りで魔力感覚がヒットし、山肌から抜けるあたりで再度感覚がヒットした。


『これってレーダーだよね!』


 魔力棒を扇状に山肌に向けて伸ばしてゆくと山肌の形状を検知することが出来たとたん俺は寝落ちしていた。


 目が覚めるとベッドだった。


「カミー! ご飯だよ! 寝るのはベッドにしてよね! もう大きくなって運ぶのは大変なんだから・・」

「ごめんなさい。」


 俺は申し訳なく感じた。師匠は『年だから・・・』とかぶつぶつ言いながら一階へ降りて行った。俺も起き上がると食堂へ行った。


 食事を終えかたづけを済ませてベッドに入った。


『さあ魔力の訓練をしよう!』


 扇形に魔力を形成しそれを伸ばしてゆく。扇の範囲に部屋の形状が感知できる。魔力を円形にしてその周辺を伸ばしてゆくと部屋の形状が完全に感知できた。魔力を球形にできるだろうか?やりかけたところで寝落ちした。朝の目覚めは爽快だったが魔力操作に問題があるのにも気がついた。


『魔力の訓練方法としては良いかもしれないが、戦闘中に寝落ちしていれば危険だ!もっと省エネ的な魔力操作を行わなければ・・・魔力を飛ばすことはできるか?

やってみよう。』


 魔力の一部を切り取って飛ばしてみた。飛ばすというのは丸めた魔力の一部を切り取って、方向を定めてビューンと進める感じかな・・壁に当たったことがわかった。さらにそのまままっすぐに飛んで行き地面に触れてもそのまま地面の中を進み消滅した。


『おっ! これはナイスだぜ!十メートルは飛んだかなあ?』


 塊では直線距離で十メートルほどだ。レーダーなら扇形だと扇形の円周部分をを飛ばしてみる。おおよそ八メートルほどで希薄化してしまったが、希薄化するまでは感知を継続することが出来た。そんなことを繰り返す内に寝落ちしてしまっていた。


「カミー! いつまで寝てんの起きなさい!」

「ごめん!」


『いつの間にか寝落ちしていた。睡眠不足でちょっと辛いかなあ。』


 朝食を食べ師匠の調剤を手伝って、午後に入る前の休憩時に師匠に話をしようとした。


「ちょっと待って! 丁度いい機会だから説明しておくわ。この里では自分がつかみ取った技術は自分だけのものなの。もちろん師匠に言うのは差し支えないけど、自分の技術を伝える相手は弟子だけなのよ。カミーは魔力なしだから自分の持つ技術を守らなければならないというわけ。あたしの研究成果も研究内容も村長には開示しているけど、村長以外とは研究の話はしてはならないのよ。この村では魔法も含めて徒弟制度なの。自分の子供であっても弟子にならないと教えてはだめなのよ。 なぜか?って言うとね。この村は傭兵を育てる村なの。傭兵だから敵方に雇われる場合があるでしょう。そのときに相手に自分の技が知られていたら負けてしまうでしょう。

 それからね魔法っていろんなことが出来るでしょう。ここで話していることを聞くことが出来る魔法があるかもしれないからね。だから常に注意してなさい。今は多分だれも聞いているとは思えないけど注意してね。といったところで、カミーは何を言いたいの?」


 俺は小さな声でできるようになったことを師匠に伝えた。


「ところで、あれはできるようになったの?」

「まだです。」

「・・・・・・」


というわけで、どこが”というわけ”なのかは置いておいて・・・・・


『まあ、方向性はあるんだけどね!』


 俺の魔力に触れると薬草が萎れてしまうので、萎れないほどの魔力量になるよう魔力の塊から魔力の針を作ってみることにした。

 結論から言えば植物の魔力を検知できるようになった。植物の魔力は植物の細胞の中にあるんだよ。過去世の最新鋭の戦闘機のAESAレーダーは二百五十六目標を同時に探知できたんだけど・・・植物の細胞って何万個もあるわけだから、同時感知なんて無理、脳の処理能力を遥かに超えているんだから・・・・

 この間、寝落ちの記録が更新し続けた。まあ、魔力も増大したけど・・・


聖暦二三二二年六月十八日


 師匠に報告して頭をなでてもらった!

師匠は


「あたしは三年以上かかったから、優秀だよ! 感心!感心!」


俺はなんとなくとても誇らしく感じた。




 

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