第8話 陰謀
聖暦二三一九年六月十三日
目隠しをされて連れてこられたダビドとアダリナは目隠しが外れるとすぐにひざまづいた。
「報告せよ!」
「見届け任務ダビドより報告します。」
攻撃任務の五名より先行してオビエドに潜入していたダビド達は攻撃予定地点で隠形に入っていた。既にブリテン商人が持っていたブリテン王国第五王女のオビエド王国第三王子に宛てた親書のすり替えは首尾よく完了したとの報告を受けていた。攻撃担当者は王女に変装した一名、王女の召使に扮装した二名は逢引の準備を行い、王子の到着を待っていた。ブリテン王国第五王女は一週間前にオビエドに入国していたが公務が忙しく第三王子と逢うことができていなかった。
第五王女はデュークに逢引の場所と時間を指定した親書を渡していた。この親書を逢引の場所を変えた書面にすり替えた。
第三王子と見られる人物が訪ねてきた。第五王女側の召使女が天幕の中から出て来て王子を天幕の中に招じ入れた。すぐさま剣劇の響きがすると天幕の周りにオビエド兵士が殺到してきた。第五王女の護衛二名が天幕の中に侵入してすぐ爆発音があった。その後天幕の中から女一人を拘束した王子が出て来た。天幕に飛び込んだ護衛は出てこなかった。オビエドの兵士が天幕の中に入り四名の身体を運び出していた。ダビド達は隠形を続け、オビエドの兵士の撤退を待ってから自分たちも撤退した。
以上の報告を行った。
「王子の風体をしたものは誰かわかるか?」
「わかりません。変装していたので再度見てもわからないと思います。」
「拘束された女から情報が漏れる可能性はあるか?」
「ありません。五名はブリテンの暗殺ギルドのメンバーです。彼らに指示をしたものの名前はわかるかもしれませんが、そのものとわれらの接点はわからないでしょう。」
「情報は漏れていたのか?」
「おそらく漏れていたと思われます。」
「何か気になることはあったか?」
「撤退道中で仕掛けに解除されたものがありました。」
「追跡された可能性があるのか。」
「はい! 追跡していることを故意に知らされたと感じています。」
「よしわかった。明日村へ行く便がある。しばらく隠れておけ。」
「はっ! 了解いたしました。」
ダビドとアダリナはその場で目隠しをすると案内したものに先導されて退出した。ダビドの報告を聞いていた男が壁のほうに向かって言った。
「陛下、お出ましになられてもよろしいかと存じます。」
その言葉が終わらぬ間に壁の一部が開き男が姿を見せた。
「やはり漏れていたか。」
「御意に。」
「円卓会議だろうな。」
「・・・」
「第三王子の帝国嫌いは有名だからな。とりあえず第一段階は成功ということか・・・」
誰に聞かせるでもなく男はつぶやくと
「アティ酒を飲んでいけ・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます