いわゆる「高位令嬢もの」の婚約破棄奮闘系です。
腹黒ヒロイン系、ざまぁみさらせ系、没落スローライフ系など
とにかく似て異なるものが乱立するジャンルですが、
ライトノベルらしい展開の速さがむしろ読みやすかったです。
基本的には各エピソードごとに案件が完結するので、
この手の異世界ファンタジーで困惑することの多い「モリモリ設定小出しスタイル」苦手派にも、非常にとっつきやすく感じました。
何より、無闇矢鱈と主要人物を悪人に仕立てないのが読み手に優しいです。
はちゃめちゃなのに、誰も不幸にならない。
突出した脳筋権力者がいるわけでもない。
なぜか魔法が全てを解決する展開でもない。
でも、ちゃんと「異世界ファンタジー」らしさはあり、
「然るべき身分のあるエエとこのお嬢」という設定はブレない。
そして、スピード感のある展開ながら、
ちゃんと山場があり見せ場があって簡潔にまとめてる。
大事に育てられて悪意に接したことのない「本当のお嬢様」は、
決して拗ねたり捻たものの捉え方をしないし、
言葉遣いや所作にも「それらしい育ちをしているが故の矜持」がある。
個人的には「エエとこのお嬢」が突然フランクに悪態を吐いたり、
ひっどい言葉選びをしていたりすると興醒めしてしまうので、
そういった場外要因がなかったのも読みやすい一因だと思いました。
あとは不憫属性のヒロインの兄(ツッコミ要員)が幸せになってくれるといいなと、ひっそりエールを贈りたい。