第329話久し振りの勉強会②

「うへー、めっちゃ喉乾いたー」

「俺も俺もー、なんか飲みもんくれー!」

「二人共さー、余計な動きが多いんだよー。もっと温存しなきゃー魔力が勿体ないよー」


 わいわいがやがやとジェイダイト兄弟とユリウス、それにブレティラとニコラとベルちゃんが中庭から戻って来た。


 ルイーズの『喉が渇いた』という言葉をきっかけに、室内にいた私達も休憩にしようとお茶タイムを取ることにした。


 皆ある意味勉強中だった為、勉強相手と色々と話し込み、喉が乾いていたので丁度良い休憩タイムだ。


 私とメイとマイでいそいそとお茶の準備を始めていると、ラファエル君が立ち上がりブレティラの傍へと近づいて行った。


「ブレティラ、属性検査、素晴らしい結果が出たみたいだね、おめでとう。流石ブレティラだ、私も嬉しいよ」

「……っ! ラファエル君、有難うございます。私も……私もとっても嬉しいです」


 ラファエル君は国王陛下からブレティラとニコラが全属性になった事を聞いていたのだろう、ブレティラの手を取ると、まるで自分の事のように喜び祝いの言葉を送ってくれた。


 突然ラファエル君に褒められたブレティラは、思いもしなかった出来事だったのだろう、ちょっと恥ずかしく、そして嬉しかったのか、頬を染め照れ笑いのように微笑んだ。


 可愛い!


 はうううっ! ブレティラが可愛い! 可愛すぎる!


 私の妹、マジで天使でしょー!


 私がブレティラの可愛さに身悶えていると、ラファエル君は今度はニコラの前へと移動した。


 そしてちびっ子ニコラと視線を合わせる様に膝を折り、ブレティラにしたように手を取ると、ニッコリ笑顔でニコラに話しかけた。


「ニコラも、おめでとう! 属性検査、ニコラも素晴らしい結果だったようだね。きっとその結果は君が大好きな魔道具作りの役に立つはずだ、これからも頑張ってね」

「……っ! はい! ラファエル様、有難うございます! 僕いつかあの属性検査魔道具みたいに後世まで大切にされるような、素晴らしい魔道具を作り上げて見たいです! ラファエル様、有難うございます。僕、頑張ります!」


 ううう……!  


 ニコラ、貴方もなんて可愛くて良い子なのっ!


 本当ウチの子、マジで天使でしょうっ!!


 胸を押さえふらつきながら涙を我慢する私を、ジェイが苦笑いを浮かべ慣れた手つきで支えてくれた。


 私の持病をよく知るこの部屋のメンバー達は、私が胸を押さえふらついていても不安がる事はない。


 まあ、ブレティラの剣術大会での前科があるからね。


 ふらつくぐらいは可愛いものなのでしょう。


 ただこの場になれていないカーマン君とジャクソン君の二人は、私を見てちょっとだけ驚いていたけどね。


 ニコラの決意表明のような言葉を聞き終わると、誰から始まったのかは分からないが、部屋中に拍手が上がった。


 勿論ブレティラとニコラの属性検査の結果を祝福する拍手だ。


 そんな中ヴァルラム王子が配られたお茶を口にしながら、ブレティラとニコラに話しかけた。


「それで二人は何属性だったんだい? ああ、個人情報なのだから秘密にするようだったら言わなくても良いけど……ここのメンバーならきっと大丈夫だろうねー」


 ヴァルラム王子はチラリとカーマン君とジャクソン君に視線を送る。


 他のメンバーは昔からこの子供部屋に通っているし、ブレティラの事もニコラの事も自分達の妹弟のように思っているので、二人の属性検査の結果を他人に伝えるなど誰も思っていない。


 ただカーマン君とジャクソン君たちは新参者だ。


 それもまだ交流が浅くどんな子なのかは良く分かっていない。


 ヴァルラム王子はいとことしてちょっとだけ心配だったのだろう。


 優雅にお茶を飲みながら、カーマン君とジャクソン君に「大丈夫だよな?」と念押しをしてくれたようだ。


 カーマン君とジャクソン君はそれを受け、しっかりと頷いてくれた。


 皆にはまだ話していないが、ブレティラとニコラは全属性持ち。


 近いうちにその結果を披露する予定になっている。


 ブレティラとニコラもその事は知っている為、皆に結果を話す事に特に戸惑いは無い。


 皆から祝福を受けニコニコ顔な二人は、お互いに視線を合わせ少し照れた様に「へへへっ」と笑うと、皆に属性検査の結果を報告した。


「私は属性検査で全属性を頂きました。お姉様とお兄様と同じですの、それがとっても嬉しいのですわ」

「僕も全属性でした。これで今まで以上に色々な魔道具が作れます。僕はそれが一番嬉しいです」


 テヘッと朗らかに笑う二人とは、まるで温度差でも出来たかの様に、温かく見守っていた友人皆の笑顔がピシッと固まる。


 それにヴァルラム王子は驚き過ぎたのか、お茶を噴き出し「ゴホッゴホッ」と咳き込み始めた。


 ブレティラとニコラの遊び相手であるジェイダイト兄弟とユリウスも、大きく口を開け、ポカンとした間抜けヅラになり、固まったまま動かない。


 他の子達が笑顔のまま固まり動かなくなる中、結果を知っていただろうラファエル君だけは平常運転だ。


 そう、友人皆が驚くのは当然のこと。


 全属性持ちなど、この世界では滅多に出ないはずだからだ。


 多分ラファエル君の祝いの言葉で、ブレティラとニコラは珍しい二属性持ちにでもなったのかな? ぐらいに皆は考えていたのだろう。


 それがまさかまさかの全属性持ちだった。


 その上ブレティラとニコラの姉兄である私とジェイも全属性持ちなのだ。


 皆が固まってしまうのも当然の事。


 ラファエル君だけは笑顔で「本当に素晴らしいよ」と二人をまた褒めていた。


 私とジェイは視線を合わせ苦笑いを浮かべると、皆が動き出すように、もう一つの話をする事にした。


「皆、あのね、二人のこの素晴らしい結果を受けて、この度ニコラをスピネル侯爵家の養子にすることになったの。なのでこれからはニコラは本当にスピネル侯爵家の子供だと名乗れるようになるの……勿論陛下からの直接の許可をお披露目の時に頂いてからになるけれど、これからは私達の弟として、皆ニコラの事を宜しくお願いしますね」


 私の言葉を聞いて、また拍手が上がる。


 ニコラがスピネル侯爵家の本当の子供になる。


 友人達がそれを喜んでくれている事が分かる。


 仲がいいジェイダイト兄弟やユリウスは、ニコラを胴上げしそうな勢いだ。


 照れるニコラは皆からの拍手を受け「有難うございます」としっかりとお礼を言っていた。


 ニコラもとっても嬉しそうだ。


 ニコラが私達と兄弟になれる事を喜んでくれている。


 それに本当の意味での家族にもなれる。


 ニコラの弾けんばかりの笑顔を見て、それが何よりも嬉しい感じた私とジェイとブレティラだった。


 ニコラ・スピネル。


 中々にいい名前だよね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る