ヨルとアサの初お家デート 2
二人はお皿をかたづけた後、お茶を飲みながら話すことにした。
楽しく話していると、不意にヨルはアサに尋ねた。
「なあ、デートってこんな感じでいいのか?」
ヨルは今まで一度もデートというものをしたことが無いので、今日みたいな感じでいいのかわからなかったため、少し不安になった。
アサもデートはしたことが無かったため、少し考えてから口を開いた。
「わたしもデート初めてだからよくわかんない。でも、二人が楽しければいいんじゃないかな。ヨルは今日楽しかった?」
「ああ、もちろん。……アサは俺といて楽しかったか?」
ヨルは即答し、そして、少し不安げに尋ねた。
「もちろん、わたしも楽かったわよ。だから、デートは今日みたいな感じで、二人がやりたいことをやればいいんじゃないかな」
ヨルは、アサの言葉を聞いて、安心したような笑みを浮かべて「そっか」と呟いた。
「ヨルはデートで何かやりたいことたいことある?」
「アサとやりたいことか……二人で出かけたり、今みたいに二人でゆっくり話したりしたい」
「じゃあ、行きたいところとかある?」
アサの問いかけに、ヨルは少し考えてから口を開いた。
「少し遠くなるけど、水族館行きたい」
「おー、いいじゃん!水族館好きなの?」
「いや、別にそういうわけではない。ただ、デートっぽいところってどこだろうって考えたときに思い浮かんだのが水族館だった。それで、久しぶりに行きたいなって思った」
「わたしも最近行ってないな。最後に行ったのは、小学生の時、だったかな。あんまりおぼえてないけどね」
「俺も最後に行ったのは小学生の時だな。幼馴染とかと一緒にいた記憶があるけど、それ以外はあんまおぼえてないな。アサはどっか行きたいとこあるか?」
アサはヨルよりも長く考えてから口を開いた。
「そうね……カラオケとかいってみたいかも。わたし、カラオケ行ったことないから行ってみたいの」
「カラオケか、俺、歌うの好きだから一緒に行きたい。それに、アサが初めてカラオケ一緒に行く相手が俺っていうのもいいな。まあ、歌うときはさすがに声保てないけど、それは諦めるしかないな」
「あー、忘れてた。まあ、そこはしょうがないわね。一回行ってみて、二回目行くか決めようか」
こればかりはどうしようもないことだが、歌声と見た目のギャップがすごそうだな、とアサは思った。
「そうだな。ほかに恋人たちがデートで行きそうな場所ってどこだろうな」
二人はしばらく考えてみたが、まったく思いつかなかった。
恋愛経験ゼロの二人が考えたところで埒が明かないので、デートについてネットで調べてみることにした。
スマホを見ながらヨルは話し始めた。
「映画を見に行くとか……?でも、アサといるんだから、話せるほうがいいな」
アサと一緒にいるのに二時間近くも話せないし、顔も見られないのはもったいないな、とヨルは思った。
「動物園とかどうだ?」
「動物園か、いいね。あっ、遊園地とかどう?激しいアトラクション避ければ大丈夫だよね」
「そうだな。遊園地、楽しそうだからいつか行きたいな。動物園とか遊園地とか他にも調べてみるといろんなデートプランがあるな。どこも楽しそうだから、いつか二人で行ってみたいな」
「そうだね。二人でいろんなことやりたいね。まあ、海とかプールとかは楽しそうだけど無理だね。それと、遠出はちょっと大変だし、近場でもお金かかるから、お家デートが多めになるよね」
二人はバイト禁止の高校に通っているから頻繁には遠出はできないし、トイレ問題があるためあまり遠くには行けない。
「そうだな。できないことは多いけど、お家デートも楽しいから、無理して遠出しなくていいよな」
「そうね。家でできることもたくさんあるし、それに、わたしはヨルと二人で一緒にいられればそれでいいからね」
「俺も同じで、アサといられればいい。でも、俺の家はたぶん無理だから、アサの家ばっかりになっちゃうけど、いいか?」
ヨルは申し訳なさそうに尋ねた。ヨルは自分の家にアサを招きたいが、休日のヨルの家には高確率で某バカップルがいるため、アサを招待することはできない。だが、某バカップルのことを邪魔だとは思えど、追い出そうとは思えない。なぜなら、アサと出会って彼らの気持ちが少しわかるようになってしまったからだ。
「うん、全然いいよ。家ならいつでも気軽に来ていいよ」
「ありがとな」
「ところで、どのくらいの頻度で会える?毎日でも会いたいくらいだけど、準備に時間かかるから学校ある日は無理だし、お互いやることもあるだろうし、そんなに頻繁には会えないよね」
「そうだな。……夏休みとか長い休みは別にして、週に一日くらい、とかどうだ?」
「まあ、それくらいがちょうどいいかな。土曜日か日曜日のどっちかに会うって感じになるよね。……週に一日しか会えないなんて寂しい。でも、わたしたちはさ、偶然ばったり出会う、とか、学校ですれ違うとかも絶対にありえないじゃん。やっぱり寂しいよね。しょうがないことだけどね」
アサは寂しそうに笑った。
「俺も寂しい。いつまでも会えるわけじゃないからね。会えるうちにたくさん会いたいよな」
ヨルという存在は、納得できるかっこいい見た目を作れなくなったときに消えてしまうはかない存在だ。それはアサも同じだ。二人は好みの見た目を実現させるだけのただの作り物。いつ消えてもおかしくない二人だからこそ、会える時にできるだけ会って、会える時間をめいっぱい楽しみたいのだ。
「そうだ、一緒に写真を撮らないか?写真ならいつまでも残せるから思い出にもなるし、いつでも見ることができるだろ」
「それいいね。これから、たくさん二人の写真撮ろうね。さっそく撮ろうよ」
「そうだな」
二人は立ち上がると、隣に並んだ。
今回はアサのスマホで写真を撮ることにした。
「俺、自撮りしたことない」
「そうなの?じゃあ、わたしが撮るね。お姉ちゃんにやり方教わったことあるの」
「ああ、確か、アサのお姉さん、写真撮る仕事してるんだっけ。モデルとかの撮り方だけじゃなくて、自撮りの仕方とかも知ってるんだな」
「うん、お姉ちゃんは写真の撮り方に詳しいんだ。人間を撮るのが好きらしい。さあ、撮ろう」
アサはカメラを構え、二人がいいかんじにフレームにおさまったところで、何枚か写真を撮った。
二人は撮った写真を確認した。
「いい感じだな。ありがと」
「どういたしまして。あとで写真送るね」
「ああ、頼んだ」
この後、二人はヨルが帰らなきゃいけなくなる時間までいろんなことを話していた。
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