第6話 スライム使いと貴重な研究魔獣
「もうすぐです。中央王立魔獣研究協会の水棲生物科!しかもですね。聞いてください。なんとなんと!新種の魔獣を現段階、今現在!研究しているんです」クリスの笑顔は眩しく、この暑さと合わさると太陽のように眩しい。しかも髪色に太陽が反射してほんとに眩しい
「わかりましたから早く行きましょう。スライム達が俺の水分さえ吸おうとしてますから」
連れてきた2匹のスライムは俺の体にべったりとくっつき汗を吸収していた。本当は汗なんか体に悪いからさせたくない。逆を言えばかなり危ない状況と言える。核だけになってしまったら復活するのに時間がかかるし、お構いなしに俺の血に手を出してきたら、俺が干からびる。
「つきました!ちゅうお……面倒なんで水棲科!に来ました!」近づくに連れクリスのテンションの上がりっぷりを見るからにそんなに見せたいものなのだろうか、もう顔が見えないくらい眩しい。
「その新種の名前なんですが!私が付けたんです!マリアナ博士に名付けを命じられて、その名も……!?」
声を遮られるほどの雄叫びが俺らを揺らした。バイクを止め、雄叫びが聞こえた扉の前へとやってくる。重い鉄扉を通り抜けるほどの雄叫び。きっとこの先に何があるかは自分自身の本能が分かりきっている。
「なっ!?」
クリスが水棲科の大扉を開け始め、俺は止めようとしたが、隙間から見えた光景に俺は息を呑むしかなかった。
大きな蒼竜が細長い体を渦のように巻き、研究員を襲っていた。
辺りには無数の水玉、その一つ一つに研究員が閉じ込められ、もう事切れていることは言うまでもない。
「スイ……?!居ない?!……!!スイト!スイカン戻ってこい!」俺が呼ぼうとした前にはスライムは出てきており、はるか先で蒼竜が出した水を吸っていた。
「よし」まるまると水を吸って戻ってきたのを確認し、武器をそれぞれに持たせる。戦闘なんてないと思ってるから、その場凌ぎのナイフとそこら辺に落ちてたガラス片だが
「ん!あそこにいるスライムはなんだ」
そうクリスに聞くと、放心状態なのか一言も反応がない。
「きっと、そこらに転がってる水棲魔獣について来たスライムか……。大丈夫だろ。こい!お前はスイセイって呼ぶ。」そう呼ぶとスライムは蒼龍が出していた水を吸うのをやめ、此方へと這ってくる。
その声に蒼龍も気づいたのか、こちらへと振り返る。
「ギャアーーース!!」
その時に気づいた。背鱗が立っていることに
「なぁクリスさん。一つ聞いてもいいか?あの魔獣の名前ってウォータードラゴンだったりしないか」
「あ、はい。そうです」だいぶ参っているのか声も小さい。さっきまでの明るい感じはなく枯れた向日葵のように悲しげまであった。
「守れ!」
呼んだスイセイで受け止める。水球に包まれたスイセイはやがて吸収し、我が物とする。
「よし。行くぞ!お前達!」
スライム達は息を合わせるように飛びかかっていった。
2人のスライム、スイカとスイルはナイフとガラス片を持ったまま近づき、水棲スライム改めてスイは水鉄砲で応戦する。
「ダメです!ウォータードラゴンは貴重な研究!ドラゴン族です!」
スイが放った水鉄砲がウォータードラゴンに当たると怯んだ
「これがどんな貴重でも、人を殺してしまった以上。ドラゴン族だろうとなんだろうと!!」
その隙に2人のスライムが張り付き鱗の隙間に切れ物を入り込ませる
ウォータードラゴンの叫び声がこだまする。
(なんで?ウォータードラゴンは何度かの実験で水魔法を吸収し、力にするはず。でもその場で仲間にしたスライムの水魔法が聞いてる?……まってスライムは魔素食性魔獣。だとしたら、あの水棲スライムが出している水ってなに?!魔法じゃないの?!)
「よしこのままだ!お前達息を合わせろ!」
深くナイフとガラス片が刺さったのか悶え暴れるウォータードラゴンに対して、スイにスイル、スイカを連結させる。こちらを見ながら背鱗を立て、こちらへと飛びかかってくる。
「こいつを閉じ込めるほどの水球を出してやれ!」それはスライムには到底できない芸当
スライムの魔素量じゃ魔法値では到底無理なこと
だがスライム使いのスライムは違う。自然界のベクトルで判断してはいけない。そのことはクリスはわかっていた。けっして無理だとは思わなかった。
スライム3匹が核になると同時にウォータードラゴンを包み込むほどの水球が飛び出るとウォータードラゴンを吸い込み、屋根を突き破り、夏の暑い日差しの中、はるか南東の方角へと飛んでいった。
それから、クリスがいつの間にか呼んでいた医療班が現場に到着し、奇跡的に犠牲者は居なかった。あのウォータードラゴンが出した水球は拘束魔法みたいなもので、命を取る力はないとクリスが話してくれた。
なんだかとんでもないことをしてしまったのではないかと内心ビビりまくりなスライム使いなのであった。
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