第5話 スライム使いとおしゃべり助手
アユムはある会場へと呼ばれていた。
中央王立魔獣研究協会の魔獣科特殊魔素学のソカベさんの娘を名乗る人に呼ばれ、現段階、絢爛な馬車に乗っている。
さすが、中央王立所属御用達だ。揺れも少ないし菓子も用意されている。
呼ばれた理由は、ソカベさんに渡したスライムの観察日記が影響していると、案内人は言っていた。一体どんなことを聞かれるのだろうか。
「スライムだけを使役出来るってだけで、スライムのこと実際は何も知らないんだよなぁ」
何を話そうか、それとも聞いてしまおうか
俺は王国まで、連れてきたスイトとスイカンを撫でたり、体の中に手を突っ込んで涼んでいた。
王国に着くと更に熱気が増し、立ちくらみを覚える。
「昨日もそうだが今日も暑いなぁ……こうも暑いとスライムは核だけになってしまいそうだ」
こういう暑い日になるとスライムは蒸発してしまう。死ぬわけではなくあくまでも環境に適応するため、雨という水を得られれば復活する。
なんとも便利な魔獣なのだろうか?きっと魔王が居なくなっても生き残り続けるだろうな
「お待たせしました。」昼の空を眺めながらものに耽っていると、栗色をした髪の女性が近寄ってきた。
「えっと、ソカベさんの娘?」
「あ、私はマリアナ博士の助手のクリスって言います。マリアナ博士、ソカベさんの娘さんは定例研究会が終われば来ると思います」
第一印象はとても礼儀正しい女性だと思った。体型もスラリとしてるし、スレンダーという言葉がよく似合う女性だとも思う。
「えっと何のために呼ばれたの?」
俺が1番聞きたいことを尋ねた。なにぶん急な話だった。朝、イオがスライムを借りにきたと思ったら入れ替わりで王国遠征班が俺に召集書を出してきたからだ。王直属の命令だったら身構えたけど、召集書の中にはソカベさんと名前と姓が同じがあったことから安心してついてきた。
王直属の命令であるから、断ることは出来ない分何のために呼ばれたのか知りたい。
「えっと、理由は至極単純です。なぜ魔素食魔獣がなぜ魔獣使いの魔法声に反応しているのか。それを調べるためです」
ソカベさんの時も思ったが研究員ってなんでこんなにも高圧的なのだろうか、もう少し優しく喋ることは出来ないのだろうか
「あっ!すいません。私も端くれ研究員ですので、今回は興奮しっぱなしなんです。興奮してしまうとこうなのです。」少しあたふたした様子を見せたクリスであったが、何か思い付いたのか、手を叩き俺にこう言った。
「あっ!そうだアユムさんはここの王国はモンスターブリダーズトーナメント以来ですよね?マリアナ博士は、総括会議に呼ばれて時間がかかるので、案内してあげます。モンスターブリダーズトーナメントから大分フリーデンス王国は変わったんですよ」
フリーデンス王国。
名も知れた研究大国であり、勇者の誕生から魔王、魔獣に至るまで何でも研究している。
その中でも魔獣研究が群を抜き、王国が次の魔王討伐に向け、魔獣の源である魔素を研究を始めたためそうなったと言える。
「どうですか?世界連盟にも認められ、世界各国から研究者がこのフリーデンス王国に集まるんです」紹介されながら魔導具の浮上式バイクで王国内をねり回っているが
「どちらにせよ、広すぎないか?」
このフリーデンス王国に来て思うことは何が何でもデカくて広くて、そして白い。
「このフリーデンス王国は全てが城みたいなものですから、城壁は魔獣の力でも容易に粉砕できません。なんて言っても世界一硬い甲羅をもつ亀型魔獣の甲羅の粉末を使っていますから」
「あっ!もしかして、何体の魔獣をやったのか?って思いました?」
いや何も思ってないと言う前にクリスは話始める。
「世界一硬い甲羅と言っても……世界一硬い甲羅を持っているのはガメゴーラって言うんですが、甲羅はそこまで硬くないんです。脱皮をするときだけ非常に頑丈になるんです。それはですね、一種の生存本能が……」
さっきまでの礼儀正しい雰囲気は消え、好きなことを語る子供ようにハキハキと喋る。
研究員連中はこんなのばっかりなのか、もう帰りたくなってきた。そもそもスライムを使えると言っても、なぜ使えるかを俺に言われても分からん。
しっかし、本当に止まらない。早く部屋に戻りてぇ。スライムみたいに溶けちまいそうだ。
「話の腰を折って悪いんだが、スライムたちが少し限界みたいなんだ。これ以上話されるととスライムがカピカピの干物になっちまう」
「あー…わかりましたぁ!じゃあ!水棲生物科の案内に移りますねー」バイクのハンドルを大きく切ってクリスは進み始める。
早く部屋に戻してくれと言いたいが話すタイミングを逃したスライム使いなのであった。
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