第4話 スライム使いと依頼


「スライム使い!おい!おーーい!!」

誰かが呼んでいる。ああ……なんだかとっても……!!いでぇ!

俺は頭部の痛みと共に起きた。


「おい!スライム使い!なんでぇ!オメェは荷台の上で寝てんだぁ?物は?仕事はどうしたんだよぉ!」

「仕事?ああ。荷台の護衛ならスライムたちに……」辺りを見渡したが居ない。スライム達が俺の使役を離れた?!


なんでこんなことになったのか、今から思い返してみよう。



「ソダシさんに10000ジュソ貰ったし今日はパァーと使うかぁ!」

そう言い俺は冒険者酒場へとやってきたのであった。


冒険者酒場。文字通り、冒険者が使う酒場で依頼や冒険仲間集めなど、冒険者はここから始まるといっても過言では無いところだ。ちなみに魔獣使いは一応冒険者だ。


「お!スライム使い!なんだぁもう金銭無くなって稼ぎに来たのかぁ?」

「がルンバ。こそ昼間から飲んで仕事しなくてもいいのか?」

たわいもない会話で俺は席についた。今思い返してみれば、あの頃と待遇は天と地ほどある。きっと冒険者の俺を見る目は変わってはいない。俺が変わったのかもしれない。スライムは魔獣の中でも最弱。


まぁそんな世迷言は置いといて、俺がここに来た理由は……。

「なぁ。アユム。少し依頼変わってくれないか?」目当てのことをしようとウェイターを呼ぼうとしたときに1人の冒険者が話しかけてきた。


名をイガルという。中々名前の通る冒険者で、かつては遠国まで旅したこともあるという。

そんな奴が俺に何のようだ?


「依頼ってなんだ?」

「武具貨物馬車の護衛なんだが、急用が入って、だな。お前に頼みたいんだが」

「頼みって言われてもなぁ……俺は今日何もない日だし、やりたくないと言うか。スライムの調子が悪い日だし」もちろん嘘だ。今日、お金が入ったため酒場でやることがある。そのためにここに来たんだ。偽善をしに来たわけじゃない。

「無理だ他を当たってくれ」



そして、今に至る。なんで俺はあの時、拒否した依頼をやっているのだろうか?そして大失敗をしているのだろうか?


俺がやってしまったという大失敗は寝てしまったこと。基本的に使役した魔獣はしばらく使っていないと自分で動き出す。それも知能がないやつほど自由に動き回る。基本的には使役できる魔獣は知能のあるやつだけ……って今こんなことを言ってる場合じゃない!急いであいつらを戻さないと


俺は大きく息を吸い込むと、声に魔法を乗せて叫んだ。声はこだまとなり、辺りの草原を揺らす。

見える範囲の茂みや森までには届くと思うが、スライムは以外と行動範囲が広い。声な届く範囲でなくなると少々骨の折れる話になってくる


「こんなことならスライム1匹1匹に武具を保管させるんじゃなかった」

「え?!あんた!?スライムに持たせてたのか?!どうりであたりに変なスライムが……ああ!」依頼主である馬車のおじさんが叫んだ方向には鎧が立っていた。


「スライムたちなのか?」

いや違う。スライムたちには体内に物を保管しろと命令したはず、じゃああいつは……。

「兵士さんか?いや、こんな草原には居ないはず、目標の国までは少し遠すぎる」

そう見回りだとしてもここまでやってこない。


じゃああれは……考えうる限り、あいつは……魔獣!!


「スイト!ライム!」服の中のスライムを出させる。スイトはシルバー色の狼魔獣で剣の使い方を知っている。だがライムは……今さっき仲間にしたスライム。


ジリジリと鎧が近寄ってくる

「人か?人なら返事をしろ!人だとしてもこれ以上近づいてくるなら敵とみなす!!」剣出てるし正当防衛になるよな?一応動き封じるくらいにしとくかぁ!


「スイト!剣を持ったまま近づけ!」

ライムを側におき、スイトを飛んで行かせる。

鎧の主にスイトが当たると呆気なく鎧は崩れ、バラバラに各部位ごとに散らばる。


「やはり魔獣!!」バラバラになった鎧はどれも空っぽ。霧型の魔獣だなきっと


鎧を身に纏う魔獣の種類はそんなに多くない。霧型と呼ばれる小さな魔獣達が鎧や剣に棲みつき、他の魔獣を寄せ付けないようにしている。


「だがこんなに昼間に出てくるのは珍しい。何かから逃げてるのか?それとも?」

「スライム使い!倒したのでぇ……まだ生きてる!」


スイトが体当たりで散らばった鎧はまた一つに戻り、剣をスイトに向かって振り下ろした。

甲高い鉄と鉄がぶつかり合う音が草原に響き渡る。


「何だ?基本的なは襲ってこないはず……なんで襲ってくるんだ?」

そうこう言ってるうちに茂みに中から次々と鎧の部位が現れてくる。


「スライム使いィ!どうにかしてくれぇ!」

動く剣や鎧の部品などに囲まれ、真正面には完全鎧の魔獣が立ち塞がっていた。


「くそぉ……どうしたら、てゆうかあいつらをどんだけ遠くに行ったんだよ」このまま霧型魔獣に血を吸われて終わるのかと思った矢先、「ピュー」ライムが鳴いた。


「あの鳴き声まさか?」一つだけ脳裏を掠めた。

あの防具何処かで見たことが


俺は声に魔法乗せて飛べとスライム全員に命じると



辺りの鎧の部品や剣、色んな武具が飛び跳ね、わらわらと俺の元へと近づいてきた。

「あーまじか」一つ鎧の部品を持ち上げ中を見てみると日差しを避けるように干からびて小さくなったスライムが入っていた。それもどれもこれも。


そして鎧の魔獣と思われたそれもスライム達がまとまって形成されていた。


その後、馬車のおじさんに謝罪をした後に水辺によってもらいスライム達の給水をしたのちに目的地まで一睡もせずに向かったスライム使いであった。


その後、鎧がスライムの体液によって使い物にならず全武具を買うこととなり一文なしになることはその後に気づくことである。


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