第2話 スライム使いの観察記録
「おい!アユム!来客だぞー!」
借宿のハンスさんが朝から俺のことを呼んだ。
呼ばれることは沢山ある。……主にスライムが何かやらかしたとか、スライムが人を襲っているだとか…etc.色々あるが今回は声色が違った。
しかも来客だぞと来たものだ。この俺に来客となると馬鹿にしてくる冒険者の奴らか同じ魔獣使いの彼女くらいなもの。
「あーい。今行きまーす。じゃあスラボン。留守番よろしくな。くれぐれも人の頭に乗るなよ?」
返事をしているのか、それとも言葉すら理解しているのかわからないスライムに俺は何やっているのだろうと自問自答をしながら来客の所まで行く。
「これは、これは。アユムさんと心得ます。私、王立中央魔獣研究員のソカベと申します」
「王立?王立ってことはあんた大国からやってきたのか?」
「そうです。ハンスさん。では、要件だけ伝えさせてもらいますね。なにぶん私は忙しい身分でございます」そう言うとソカベは1枚の巻物を広げると咳払い一つして話し始めた。
「王立魔獣研究協会所属、王立中央研究会魔獣部門、ソカベ一行はスライム使いであるアユム様にスライムの生態日誌をつけさせてもらいたい所存であります。なにぶんスライム族とは未知の生物。なぜ存在するのか、はたまたどん---」
アユムはソカベさんの長くなりそうなセリフを割って入るように言った
「分かりました。報酬を見て決めました。生態日誌ってどのくらい?1日で足りる?数がそれなりにいるから大体の行動はわかると思う」
「ではそれで、明日の今頃には来ますので」
そう言うと借宿の前に止めていた絢爛な馬車に乗り込むと何処かへと走り去ってしまった。
「で?アユムいくらだったんだ?」
「ざっと10000ジュゾー」
「10000!!?じ、じゅぞ!大国の研究員は金持ってんだなぁ。この宿一軒ぶんくらいだぞ」
「なんだろ、高くもなく安くもない……採算取れる?」
「もう全盛期に稼せがせてもらったからな、あとは老後のおまけよ」
「老後って歳でもないのにな」
「50過ぎたら体がキツくなってくるんだよ」
そんな50代半ばハンスさんに出掛けてくることを伝えると俺はスライムを手当たり次第に観察し始めた。
主にスライムの食性は大きく分けて2つある
光合成するタイプと肉食タイプ。
まぁ肉食と大きく一括りにしてしまうと弊害が出てしまうがこの場合は省略しよう。
「スラミチ。お前は今、光合成中か?」
主に緑色系や水色系のスライムは光合成で栄養を得ている。その多くが藻類によるもので水色や緑色に見えるのはそのためである。
「あ、骨しゃぶってるな。スライ」
この子は仲間のスライムの中でも珍しい肉食タイプだ。大抵スライムが人を襲ったと聞いたらスライが関わっている。
ちなみに前回のシルバー色の狼型魔獣を食べたスライム達は軒並み体の肉が抜けるまで肉食となってはいるが完全な肉食はスライの他いない。
そのため、森へと行くと、草木を食べながら補食できる魔獣を待っているスライムが、その数は満天の星空を想像してもらえれば容易い。ちなみにその量が降ってきても並大抵な冒険者なら払い除けることが可能だ。払い除けることができる。顔にさえ罹らなければ。
試しに揺らしてみるがピクリともしない。木を切ったりなんかしても、落ちてこない。
「元々地上性だったのに、肉の一つ食うだけで樹木性に変わる。お前ら都合いいよな」
そもそも樹木棲と地上棲の違いがある。
肉食系が樹木棲。光合成系が地上棲と知ってもらっても構わない。
しかも喰うもので変わり、さっきまでの地上にいたやつが落ちていた肉片や毛を食べたことで樹木性に変わったりする。
一部例外がいて水棲と砂棲がいる。それらは食べるもの自体が違うためここでは割愛する。
「よしこんなもんでいいだろう」さて帰るかー
こんなに簡単に10000稼げるなら悪くないと思うスライム使いであった。
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