No.159:長野で合流


 梅雨の時期が終わると、すぐに容赦ない猛暑の日々が始まる。

 そしてそれは……俺たちの試験が始まることを意味する。

 一般教養科目が少ない分だけ試験数自体は減るが、専門科目はかなり深いところまで試験勉強が必要だ。

 おまけにゼミの試験もレポート提出もある。

 学生とはいえ、なかなかサボれない日々が続いた。


 なんとか試験を終えた俺は、すぐさまバスで長野に帰省した。

 実家から通いながら教習所の合宿コースで、運転免許を取るためだ。

 うまく行けば3週間後、お盆明けには免許がゲットできるだろう。


 教習所にも当然お盆休みがある。

 その時期にあわせて、皆には俺の実家に来てもらうことにした。

 今年は2泊3日の予定。

 参加者は誠治、綾音、明日菜ちゃん、エリちゃん、海斗、弥生ちゃんの6名。

 残念ながら、小春ちゃんは今回友達と予定があって不参加となった。


 実家から教習所までは、いつも家族の誰かに車で送ってもらっている。

 大概は兄の車で、通勤途中に降ろしてもらう。

 そして帰りはバスで45分かけて帰ってくる。

 バスの本数が少ないのが困りものだ。


 8月に入ると、美桜と星野と吉川も実家に帰ってきた。

 また4人で長野の市街地に出て、一緒に食事をした。

 星野と吉川は、普通に仲良くやっているようだった。

 美桜とも普通に話ができた。


 そしてすぐにお盆休みはやってきた。

 東京からの6名は、誠治の車と海斗の車に分乗して我が家の玄関前の到着した。


 6人は玄関で「こんにちはー」「今年もお世話になりまーす」と口々に挨拶をして、荷物を運び入れた。

 玄関で出迎えたお袋が、ニコニコしながら対応していた。

 綾音が「これ、つまらないものですが……」と、ヴィチーノのロゴが入ったケーキボックスをお袋に渡していた。


 6人は来る途中、既に蕎麦を食べてスーパーのカメヤで買い物をしてきたらしい。

 綾音が手にしているスーパーの袋には、ドライフルーツの袋がいくつか入っていた。


「瑛太さん、車の免許はあともう少しなんですね」


「そうなんだよ明日菜ちゃん。結局卒検と運転免許センターの学科試験だけ残っちゃって」


 本当はすべて順調にいけば、お盆までに卒検は間に合うはずだった。

 そうすれば皆と一緒に車に乗って、東京へ戻ろうと思っていた。


 ところが学校の実地で落とされたり予約が取れなかったりして、あと少しというところで教習所がお盆休みに入ってしまった。

 なのでお盆明けに卒検をパスして、東京へ戻ったらすぐに府中の運転免許センターへ行く予定だ。


 玄関先で立ち話をしていた俺たちは、とりあえず家の中に入る。

 キッチンで座っていた親父が立ち上がって、皆と挨拶を交わす。

 兄貴はまだ外出から戻っていない。

 俺たちはぞろぞろと、リビングへ移動した。


「瑛太、インターンシップ先、探してるか?」


「え? いや、全然。もうそんな時期なのか?」


「外資やベンチャー系はもう6月から始まってるわ。ウチも就活の練習を兼ねて、参加したほうかいいかなと思ってる」


「そうなんだな……」


 話には聞いていたが、思ったより就活の出足が早い。

 経団連加盟企業は来年の3月から採用情報の解禁だから、俺はそれに合わせればいいのかと思っていたら、どうやらとんでもなかったようだ。


「就活、大変そうッスね」

「海斗、エリたちだって来年なんだよ。でも……とりあえず、今晩の花火を楽しみましょうよ!」


 エリちゃんが言うように今日の夜は俺たちが去年も行った、隣町の花火大会だ。


「また星が見られますかね?」


「ああ、お天気はいいみたいだよ」

 俺は明日菜ちゃんにそう答える。


 皆花火大会も川遊びも、楽しみにしているようだ。

 お袋がお茶を運んできた。

 明日菜ちゃんと弥生ちゃんが立ち上がって、手伝ってくれた。

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