No.115:学園祭当日


 学園祭当日。

 幸いなことに、週末のお天気は二日間とも快晴らしい。

 誠治は朝の5時半に俺のアパートへ車で迎えに来た。

 鉄板やテーブル、その他器具一式とかをリース会社に取りに行くためだ。

 

 食材はエリちゃんと明日菜ちゃんにお願いして、買ってきてもらった。

 そして明日菜ちゃんの家で、大量のキャベツと玉ねぎをあらかじめ刻んでもらった。

 晴香さんにも手伝ってもらったらしい。

 今度お礼をしないとな。


 俺は昨晩明日菜ちゃんに届けてもらった食材を持って、誠治の車に乗り込む。

 誠治は今日、酒の配達用の軽トラを運転していた。

 荷台には大きなクーラーバッグがあり、それにすべての食材を入れる。

 中には大量の氷が入っていた。


 俺と誠治はリース会社に着くと、どでかい焼きそば用の鉄板2台、テーブル3台、その他全ての備品を次々と荷台に運び込んだ。

 誠治が慣れた手つきでロープで固定する。


「実はここの会社の社長さんがうちのお客さんでな。社長の奥さんとは、俺も配達の時によく顔を合わせるんだ。それで学園祭で鉄板を使いたいっていったら、格安で貸してくれることになったんだよ」


「そうだったんだな」


 やはり縁は大切にしないといけない。

 俺たちは30分程かけて、学校へ到着した。

 まだ7時過ぎだが、海斗が待ってくれていた。


「お疲れ様ッス」


「海斗、朝早くから悪いな」


「全然問題ないッス」


 俺たち3人は、荷台から全ての荷物を降ろして自分たちのブースへ運んだ。


「それじゃあ悪いけど、準備頼むぞ」


「了解だ」

「了解っす」


 誠治は軽トラに乗り込んで、中野へ向かう。

 学校には当然駐車場がない。

 あっても駐車料金が、べらぼうに高いのだ。


 その話をした時に、綾音が「ちょっと遠いけど、ウチのマンションの来客用駐車場ならタダで停められるかもしれない。ちょっと聞いてみるね」と申し出てくれた。


 交渉の結果、土日のお昼間だったらタダで停めてもらってもいいということになった。

 従って誠治はこれから中野の綾音のマンションへ行って車を停めてから、綾音と一緒に学校へ戻ってくる。


 さて、その間に俺と海斗はひと仕事だ。

 まずはブースの設営だ。

 テーブルを設置しその上に鉄板を乗せる。

 プロパンガスのボンベを繋いで、日よけ用のガゼボも設置する。

 そしてレンタルに含まれていた「焼きそば」と書かれた暖簾を取り付ければ、俺達の屋台の完成だ。


 この時点で、時刻は8時半。

 学園祭の販売開始時間は9時半。

 あと1時間だ。


「さてと……それじゃあ焼き始めるか」


「ウッス」


 俺たちは作戦として、まず一番火の通りにくい具材を早い段階から炒めることにした。

 そして鉄板の端に熱を入れながら具材をキープしておく。

 そして焼きそばを作る時に、その具材と一緒に炒めて仕上げていく。

 こうすれば時間の無駄がない。

 俺と海斗は鉄板に油を引いて、具材を炒め始めた。


 9時前には、女性陣も全員集まった。

 誠治も戻ってきた。

 そしてしばらくすると、美桜もやってきた。

 既に知った仲なので、皆で挨拶をかわす。


「美桜、今日明日よろしく頼むな。期待してる」


「期待されても困るけど……でも頑張るよ」


 女性陣は全員、誠治から支給された『ミニ浴衣』を持って着替えに行く。

 更衣室もないので、おそらくトイレで着替えるのだろう。


 そろそろお客さんも、入り始めている。

 ただし販売開始は、9時半からだ。

 俺と海斗は麺を入れて、焼きそばを作り始めた。

 俺はミーゴレン担当、海斗はソース焼きそばだ。

 後で誠治も入って、ローテーションする予定だ。


 15分もすると、女性陣が戻ってきたのだが……。

 その光景は、壮観そのものだ。


 5人の美女が、艶やかな浴衣を着ていた。

 ピンク地に赤い花火がデザインされた浴衣である。

 ただしボトムが膝上スカートのような短さで、綺麗な生足を披露している。

 全員髪の毛をアップかポニーテールにして、目立つことこの上ない。

 

 綾音は圧巻のプロポーション。

 明日菜ちゃんの白い生足は、いつも通り眩しい。

 スリムなエリちゃんは、今日もトレードマークのポニーテール。

 美桜もほっそりした体型だが、長くて白い足が綺麗だ。

 小柄な弥生ちゃんは、健康的な太ももに目がいってしまう。


「や、やっぱりまた公開処刑じゃないですか!」

 弥生ちゃんは顔を赤くして、ももの上に手を置いて隠そうとする。


「そんな事ないって。きっと優しいおじさんが、お菓子とか買ってくれるから」


「子供じゃないですから!」

 誠治のジョークに真剣にツッコむ弥生ちゃんだった。


「じゃあ最初は明日菜ちゃんが販売補佐をしてくれ。俺も中に入る。美桜ちゃんと弥生ちゃんは、屋台の前で集客。綾音とエリちゃんは、人通りの多いところでチラシを配ってくれ」


 誠治は俺がデザインしたチラシを、綾音とエリちゃんに手渡す。

 そして全員、それぞれのポジションへと移動した。


「いよいよですね」


 屋台の中で、明日菜ちゃんが俺たちに声をかける。


「ああ、明日菜ちゃんも頑張ってね」

「明日菜ちゃん、期待してるよ」

「南野、よろしくな」


 9時半まであと5分。

 いきなり大きな声が聞こえた。


「焼きそばが9時半から販売になりまーす! おいしいソース焼きそばと、アジア風焼きそばのミーゴレンの2種類でーす! 一つ350円で販売しまーす! 是非お試し下さーい!」


 一番恥ずかしがっていた、弥生ちゃんの綺麗な通る声だ。

 まわりのお客さんも、振り返った。

 そこには生足をさらした、浴衣姿の女の子。

 当然注目の的になる。

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