No.106:マニアって、何⁉


 翌日は朝から暑かった。

 今日の長野市の予想最高気温は34度。

 こんなに暑くなるのは珍しい。

 因みに東京の最高気温は37度だった。


 朝食を取った俺達は、今日のイベント会場に向かう。

 今日は川遊びの日だ。


 車で10分ぐらいに行ったところに、俺が子供の頃から泳いでいた川がある。

 そこは適度に浅瀬も深みもあって、最高の水遊び場だった。


 ところが昨日の兄の話では、そこは最近ものすごく人が増えたらしい。

 なんでもネットで拡散され、県内外から人が訪れるようなスポットになってしまった。

 役場に勤めている兄の友達が、違法駐車が問題になっていて困ってるという話をしていたという。

 とくにこのお盆の時期となれば、さらに凄い人混みだろう。


 そこで兄が勧めてくれたのが、最近できたオートキャンプ場だ。

 まだオープンしたてで、それほど有名ではないらしい。

 しかもキャンプ場内に川が流れていて、水遊びもできる。

 料金を払えばデイキャンプも可能とのことなので、そこへ行くことにした。


 それにしても……


「今日は暑いな」

 車の助手席で俺はボヤく。


「まーな。でも東京でもこんな日はあるだろ?」


「いやそうじゃなくて、長野でこんなに暑い日って俺はあまり経験がないぞ」


「でもさ、川で泳ぐってことを考えたら、暑いぐらいの方がいいんじゃない? だって川の水って冷たいんでしょ?」

 後部座席の綾音がそう言った。


「まあたしかにそうかもしれんが……」


 車で30分ほど走っただろうか。

 目的地のキャンプ場へついた。

 全員家を出る時に、既に下に水着を着ている。

 もう全員、泳ぐ気満々である。


 受付で料金を払い、キャンプ場の中へ入っていく。

 奥に行くと、川が流れていた。

 水が綺麗で、透明度が高い。

 川幅も結構広くて、浅瀬も深みも楽しめる。


 俺たちは家からライフジャケット2つと浮き輪とバケツを2つ持ってきた。

 深みを泳ぐ時は、必ずライフジャケットを着用することにする。

 川の深みは、実はとても危ないのだ。


 川の横が木陰になっていて、テーブルやベンチもある。

 俺たちはそこに荷物をおいて、川へ入っていった。


「きゃー、冷たくて気持ちいい!」

「水が綺麗だよね」


 明日菜ちゃんもエリちゃんも、川に足をつけてジャブジャブと遊んでいる。

 5人の美女は全員水着の上からラッシュガードを着ているが、それでも体のラインはしっかりとわかる。

 綾音は胸とヒップのボリュームが他を圧倒していた。

 さすがはチームのグラビア担当だ。

 まわりの家族連れからも、俺達は熱い視線を感じていた。

 主にお父さん達からだが。


 明日菜ちゃんはその細いウエストからは想像できないぐらいの胸のボリュームで、今日も真っ白な生足が綺麗だ。


 一番スリムなエリちゃんは、あいかわらずのモデル体型。キャップの後ろから覗くポニーテールが可愛い。


 小春ちゃんはやはりまだまだ子供だが、お姉ちゃん譲りの真っ白な生足が可愛らしい。


 意外だったのが、弥生ちゃんだ。

 小柄でいままでわからなかったが……実は胸のボリュームが凄かった。

 どちらかというと幼児体型気味かもしれないが、俺の横で誠治が「おおっ、合法巨乳ロリがいるぞ!」と色めき立っている。


 その弥生ちゃんが顔を赤くして、ラッシュガードの裾を下に引っ張っていた。


「や、やっぱりこのメンバーと一緒に水着はキツイです! 公開処刑です!」


「そんなことないよ、弥生ちゃん! マニアには堪らないから!」


「マニアって、何⁉」


 海斗の言葉に、弥生ちゃんは不満げな様子だ。

 

 幸いキャンプ場内は何組かの家族連れがいるだけで、それほど混んではいなかった。

 こんな穴場を教えてくれた兄に感謝だ。


 俺たちは童心に帰ったように、川のせせらぎを聞きながらはしゃぎまわっていた。

 俺も誠治も、水泳用のゴーグルを付けて潜ったりした。

 透明度が高く、小魚も見える。

 多分鮎かハヤだろう。

 テナガエビでも捕まえたかったが、それはいなかった。


 女性陣もライフジャケットを着て、ちょっとした深みに入っていく。

 流れが緩やかになっているので、明日菜ちゃんがゆっくりと流されていくのが見えた。

 15メートルぐらい流されてから、岸に上がってくる。


「すっごく楽しいです。水も冷たくて気持ちいい!」


 上機嫌の明日菜ちゃんは、川の水を体にまとってキラキラと輝いていた。


 俺たちはちょっとしたゲームをやることにした。

 昨夜皆でテレビを見ていた時に、お笑い芸人がやっていた単純なゲームだ。


 二人で対戦するマッチゲーム。

 単純に『あっちむいてホイ』をするだけだ。

 ただし負けた方には罰ゲームとして、バケツに汲んでおいた川の水をぶっかけられる。

 至ってシンプルなゲームだ。


 最初の対戦は、明日菜ちゃんと海斗。

 あっちむいてホイ!

 明日菜ちゃん、瞬殺。

 背中から強めに、バケツの水がかけられる。


「キャーーーー!」


 明日菜ちゃんの可愛い悲鳴が響き渡った。

 因みに水をかけるのは、男性陣の仕事だ。

 それでも明日菜ちゃんは「でも気持ちいいです!」と上機嫌だ。

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