No.102:長野市内散策
「誠治先輩、悪いんスけど荷物を少しそっちへ入れさせてもらっていいスか? この車で女子3人分の荷物は、結構きついッス」
「ああ、楽勝だ。持ってきてくれ」
海斗の車は赤の小型ハッチバックで、そもそもはお母さんの車らしい。
前後にピカピカの若葉マークが貼り付けてある。
大きめの鞄をひとつ、誠治の車の荷台に移し替えた。
配達用のライトバンだから、荷台が広い。
約10分後、全員が車へ戻ってきた。
何人かが手にお菓子やら飲み物やらを持っている。
はぐれた時のために、一応次の休憩地を決めて俺たちは出発した。
車はところどころ渋滞区間もあるが、まずまず順調だ。
「今日はまず、どこに行くんでしたっけ?」
「とりあえずお昼前に善光寺に着く予定だよ」
弥生ちゃんの質問に、俺が答えた。
これだけ朝早く出たら、誠治だけじゃなく皆疲れるだろう。
だから善光寺あたりで昼食を取ったら、俺の実家でゆっくりしてもらおうと思っている。
三芳パーキングエリアからトイレ休憩も含めて、3時間ちょっと。
ようやく上信越道の須坂長野東インターに到着した。
そこから更に30分。
お昼前の時間に、善光寺に到着した。
近くの有料駐車場に車を停める。
「誠治、お疲れ」
「おお、やっぱ疲れるわ。朝も早かったしな」
綾音も弥生ちゃんも、誠治に労いの言葉をかける。
もう1台の車の方を見ると、海斗が車から降りて伸びをしていた。
俺たちは参道へ入った。
かなりの人出で賑わっている。
最近はパワースポットとしても有名らしく、若い女性も増えているらしい。
山門をくぐって、本堂へ入る。
8人全員でお参りをした。
俺は事故無く、全員安全に東京へ戻れるようお願いした。
ここの参道は石畳になっていて、両サイドにたくさんの飲食店やお土産屋さんが並んでいる。
人気の観光スポットだ。
俺たちは参道を散策した。
お土産屋、甘味処、ソフトクリーム、おやき等々、女性陣の興味のそそられるものばかりだ。
全員お腹が空いていたので、昼食を取ることにした。
少し歩くが、安くて美味い蕎麦屋がある。
そこへ移動することにした。
仁王門を抜けて、さらに長野駅方面へ歩く。
左手に有名な七味唐辛子の店が出てきた。
そこは帰りに寄るとして、もう2-3分歩くと目的地の蕎麦屋だ。
蕎麦屋はお昼時なので、やはり結構混んでいた。
それでも10分ほど待つと、二階席に案内してくれた。
ここの売りは十割蕎麦。
つなぎを使っていないので、蕎麦の風味が強い。
俺はここへ来ると、いつも蕎麦のセットメニューを頼む。
天丼セット、豚丼セット、あるいはいなりずしと小さい天ぷらのセットの3種類がある。
俺と海斗が天丼セット、誠治と綾音が豚丼セット、あとの4人はいなりずしと天ぷらのセットを注文した。
「このお店には、よく来るんですか?」
明日菜ちゃんが訊いてきた。
「そうだね。友達と長野駅周辺をふらつく時は、ここに来ることが多かったかな」
まあ映画を見たり、買い物をしたり。
美桜とデートで善光寺へ行ったことも……あ、そう言えばあの時も、ここへ寄ったんだったっけ。
しばらくすると、食べ物が運ばれてきた。
女性陣から、歓声が上がる。
8人中5人が女性なので、なかなか
いただきますをして、俺たちは食べ始める。
あちこちから、称賛の声があがる。
「あ、美味しいです」
「美味しい!」
南野姉妹にも気に入ってもらえたようだ。
「蕎麦の風味が強いッス」
「喉ごしというか、噛みごたえというか……美味いな」
「エリ、こんなに美味しいお蕎麦食べたの初めてかも」
「このあいだ神田でお蕎麦食べたんだけど、ウチ、これの倍以上のお金取られたよ」
「本当、安くて美味しいですよね」
とりあえずダメ出しはされなかった。
確かに東京の安いそばに比べたら、格段に美味いからな。
空腹が満たされて、全員くつろぐ。
朝早かったので、皆寝てしまいそうだ。
俺たちはなんとか立ち上がって、会計を済ませた。
それからまた七味唐辛子の店に戻り、女性陣の買い物に付き合う。
色とりどりの唐辛子の容器に、女性陣はきゃいきゃいと騒いでいる。
海斗も家のおみやげ用に、なにか買ったようだった。
そのまま駐車場へ戻る。
誠治と海斗には、もうひと頑張りしてもらおう。
全員車に乗り込んで、俺の実家へ向かう。
30分も走ると、緑豊かな一帯に入ってきた。
大通りから1本入ると、実家が見えてくる。
軽自動車が3台、停まっている。
家族全員いるということだな。
兄はお盆休みだし、銀行員の父親は1週間休みを取っているらしい。
一応午後に到着することは、母親に伝えてある。
玄関前のスペースに、車を停めてもらった。
車から降りると、明らかに東京より涼しい。
空気も乾燥していて、心地いい。
その代わり、蝉の鳴き声がうるさいが。
玄関のスライドドアを開けて、とりあえず俺が中に入る。
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