No.101:長野遠征


 そして8月13日。

 俺たちの長野遠征がスタートした。


 結局参加人数は8名。

 いつもの6人に、小春ちゃんと弥生ちゃんの二人が加わった。

 8人が車二台に分乗する。


 練馬インターから関越自動車道と上信越自動車道を使って、長野へ向かう。

 お盆の時期だから、当然高速の渋滞が予想される。

 いろいろ情報を集めて、朝の早い時間に出発することになった。


 誠治のライトバンには、最初に弥生ちゃんをピックアップしたあと俺のアパートへ来てもらった。

 太陽がようやく昇り始めた時間で、まだ周りは薄暗い。

 そのあと綾音を6時前にピックアップして、練馬から関越道に入る。

 

 そしてもう一台は海斗の車で、明日菜ちゃんと小春ちゃん、それにエリちゃんをピックアップしてもらって、同じく関越道に入ってもらう。


 一応俺たちは、関越道の三芳パーキングエリアで7時に待ち合わせにした。

 練馬からは、順調であれば30分ぐらいの距離である。


「はい、よかったらどうですか?」


 後部座席の弥生ちゃんから、声がかかった。

 差し出された容器を見ると、おにぎりが5個入っている。


「え? 作ってきてくれたの?」


「はい。朝早いから、皆さん食事もされてないだろうなと思って」


「うわー、弥生ちゃん女子力高い! ウチ、お腹すいてた」


「おー、弥生ちゃん、マジ神だな」


 綾音と誠治も感動している。

 俺と綾音は、遠慮なく1個づつ手に取った。

 しかも1個づつ、ちゃんとラップで包んである。

 これなら手が汚れない。

 誠治は運転中なので、サービスエリアに着いてからだな。


「あー、俺も食いてー」


「俺があーんしてやろうか? ラップのまま」


「綾音、食わしてくんね?」


「ウチが代わりに食べたげる」


「まともなヤツはいねえのか?!」


 弥生ちゃんが爆笑している。

 弥生ちゃんも「私があーんしましょうか?」と乗ってきた。

 さすがに誠治は固辞した。

 サービスエリアまでは、もうちょっとだ。


「弥生ちゃん、家でもお料理するの?」


「はい、家は自営で内装関係の工務店をやっているんですけど、共稼ぎなんですね。母親も事務仕事をしているので……だから小さいときから、自分で作れるものは適当に作って食べてました」


「そうなんだ。偉いわね」


「全然です。必要に迫られただけですよ」

 弥生ちゃんは屈託なく笑った。

 

「そういえば誠治、この車配達にも使うんだろ? 大丈夫なのか?」

 誠治のところも自営だったことを思い出した。


「ああ、いつもはもう一台の軽トラで配達してるからな。実はこの車は日頃あんまり使ってないんだよ。だからこうやってたまに遠乗りしてやると、ちょうどいいんだ」


「そっか」


「でも運転ありがとね。疲れたら、ウチ代わるから」


「大丈夫だ。運転は好きだしな。綾音に運転してもらうほうが、心配だわ」


「う、うん……否定できないかも」


「綾音さん、日頃運転されてるんですか?」


「全然だよ。春休みに札幌で免許取って家の車を少し運転したぐらい。東京で運転したことなんか、まだ一度もないんだ」


「それじゃあ誠治に任せるしかないな」


「うん、いきなり高速とか……マジ怖いかも」


「まっかせなさーい」


 そんなわけで、俺たちは誠治に命を預けることになった。

 っていうのは、大げさか……。


 程なくして、集合場所の三芳パーキングエリアへ到着した。

 海斗の車は先に着いていると、Limeの連絡があった。


 朝の7時過ぎにも関わらず、パーキングエリア内は結構な車が停まっている。

 俺たちは海斗の車を発見、その横に車を停めた。


 全員降りて、挨拶を交わす。

 よく考えたら、俺以外は小春ちゃんとは初対面だ。

 当の小春ちゃんは、心なしか眠そうだ。


 いち早く反応したのは、美少女好きの綾音であった。


「ちょ、ちょっと待って! なに、この可愛い生き物! ちょっと触らせて!」


「ひっ……」


 小春ちゃんの体をペタペタと触りだした綾音と、明日菜ちゃんの背中に回り込む小春ちゃんの攻防戦が始まった。


「おい綾音、小春ちゃんが怖がってるだろ?」

 俺が一応、援護にまわる。


「だって、こんなに可愛いんだよ! 大丈夫だよ、お姉ちゃん怖くないからね! そうだ、おにぎりあるよ。おにぎり食べる?」


 ビビっている小春ちゃんを、食べ物で釣ろうとしていた。

 しかも弥生ちゃんが作ってくれたおにぎりで、である。

 小春ちゃんは明日菜ちゃんの後ろで、首をふるふると振っている。


「ちょっと小春、皆さんにご挨拶しなさい」


「うん……南野小春です。よろしくお願いします」


「か、可愛いー! ねえ小春ちゃん、お姉ちゃんがジュース買ったげる! 一緒に買いに行こっか?」


 明日菜ちゃんの後ろで、小春ちゃんはまごまごとしたままだ。

 明日菜ちゃんは、ニコニコ笑っているが。


「とりあえず綾音、落ち着けって。全員トイレを済ませて、お腹が空いてたら売店でなにか買ってくれ。この先渋滞するかもしれないから、できるだけ早く出発したいんだ。それと車の席は、このままでいいな」


 さすがはリーダー、誠治がこの場を仕切る。


**事前のお詫び**


いつも作品をお読み頂き、ありがとうございます。


期せずして、仕事が忙しくなってきました。

そのため夜に皆様からのコメントに返信するのが、しんどい時がでてきました。


誠に不本意ですが、しばらくは皆様からのコメントに対して放置の状態が続いてしまうと思います。お許しください。


まずは余力を毎日更新の方に集中したいと思います。

引き続きよろしくお願いします。


たかなしポン太

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る