No.88:その女の子たち、可愛いの?
さっぱりステーキで肉を堪能したあと、俺たちはチェーン店カフェのサンマルコカフェに移動した。
俺はアイスコーヒーを飲んで、口の中をリフレッシュさせた。
「いやー、久しぶりにステーキなんか食べたよー。美味しかったねー」
「僕も久しぶりだよ。吉祥寺はいろんな店があっていいよね」
「わたしはお肉自体、日頃からあんまり食べないからね。なんだかお腹が落ち着かないよ」
「美桜はもうちょっと食べたほうがいいんじゃないか? 痩せすぎだぞ」
さっぱりステーキは大好評だった。
あのボリュームであの値段なら、大学の連中と行ってもいいかもしれない。
「ところでさ……美桜と仲代君は、まだ復縁しないの?」
星野がいきなりブッ込んできた。
「恵子!」
「いやだから、そんなんじゃないぞ。友達だ、友達」
「でも仲代は今、彼女いないんだよね?」
「なんだよ、吉川まで」
ゴシップ好きな連中だな。
「彼女はいないよ」
「じゃあ気になる女の子とかは?」
星野のツッコミが容赦ない。
「……」
俺は言い淀む。
「い、いるの?!」
今度は美桜の声が大きくなった。
「な、なんだよ、美桜まで。気になるというか……ほら、俺は高校までは女の友達とかほとんどいなかったろ? ところが大学に入ってからちょっとしたきっかけで、女の友達というか……仲間だな。そう、身近な仲間が増えたんだよ」
「へー。その女の子たち、可愛いの?」
「……可愛いな」
「そ、そうなんだ……」
美桜の声がちょっと暗くなる。
「3人いるんだけどな、学校の中でもかなり目立ってる。一人の子なんて、高校の時モデルのスカウトによく声をかけられてたらしい」
「えーそんなに?」
「そ、そうなの?」
「それはちょっとお目にかかりたいな」
3人の反応はまちまちで、なんかちょっと変な雰囲気になった。
「まあでもそんな可愛い女の子とじゃあ、俺は釣り合わないってことだよ。だから友達、うん、仲間だな。俺はそれでも毎日、かなり充実してるぞ」
俺はそのスカウトによく声をかけられた子と、毎週末お好み焼きを食べていることは黙っていた。
◆◆◆
「で? 美桜はどうするのかな?」
「け、恵子、なによ急に……」
吉祥寺でステーキを食べた後コーヒーを飲んでから、わたしたちは解散した。
瑛太君は歩いて、吉川くんは中央線の上りに乗って帰っていった。
そしてわたしと恵子は、中央線下りのホームで電車を待っているところ。
「仲代くん、なんだかライバルが多そうだよ」
「ライバルって……あのね恵子、私はもうしばらくは友達でいいと思ってるよ。瑛太君とは」
私と瑛太君との間に、これまで何があったのか。
恵子にはおおまかなところは話してある。
「美桜が友達の間に、仲代君が彼女をつくっちゃうかもしれないじゃない?」
「そ、それはそれで……仕方ないでしょ?」
「本当にそれでいいのかなー。先に既成事実、作っちゃえば?」
「できるわけないじゃない!」
もう……自分たちが泊まり合う仲だからって……。
順番が逆でしょ。
「案外仲代くん、モテるだろうしね。高校の時も、隠れファンが結構いたじゃん」
「そうなんだよ。瑛太君は相手にされないようなこと言ってたけど……」
「まあたっくん程はモテなかったけどね」
「結局彼氏自慢なんだね」
わたしは呆れて、ため息をつく。
でも今のわたしに出来ることは、とにかく友達として仲を深めていくことだと思う。
離れていた距離を少しずつ、時間をかけて縮めていく。
そうするしかないよね……。
私は無意識のうちに、四葉のクローバーのペンダントヘッドに手を添えていた。
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