No.87:ステーキ


 俺たち6人は、大学に来る日は学食で集まるようになっていた。

 とにかく周りの衆目を集めていた。

 女の子3人組の美貌が群を抜いているのが大きな理由だ。

 その3人は大体横並びに座ることが多いのだが、そこを通過する男子学生はほぼ全員2度見・3度見をして通り過ぎていく。

 

 一方で、俺と明日菜ちゃんのお好み焼きタイムも続いていた。

 毎週日曜日のお昼は、俺と明日菜ちゃんの憩いの時間だ。

 たまに小春ちゃんも入って、賑やかになることもある。


 そんなある日、美桜から食事のお誘いのLimeがきた。


 美桜:こんにちは。吉川くんと恵子が、吉祥寺の「さっぱりステーキ」に行きたいって言ってるんだけど、瑛太君も一緒にどうかな?


 さっぱりステーキというのは、沖縄に本店がある格安ステーキのチェーン店だ。

 最近関東地区の最初の店舗として、吉祥寺に出店した。

 俺も話には聞いていたが、まだ行ったことがない。

 オープンしたてなのでかなり混んでいると聞いていたが、そろそろ収まって来た頃かもしれない。


 瑛太:いいな、是非一緒に行かせてくれ。ただ混んでると思うから、平日夕方の早い時間にしたほうがいいぞ。


 そう返信すると、今度は美桜、吉川、星野とのグループLimeから返信が来た。

 結局俺がシフトに入っていない平日の5時半に、吉祥寺駅に集合となった。


        ◆◆◆

 

「あ、仲代くん来た。こっちこっち」


「悪い、遅れた」


「僕たちも今来たとこだよ」


「そうそう。瑛太君、歩いてきたの?」


「ああそうだ。20分もかからないくらいだからな」


 5時半を少しだけ過ぎてしまった。

 俺たちは吉祥寺駅の改札前に集合した。


 それから目的のステーキ屋を目指して歩いていく。

 5月の終わりにしてはかなり気温も高く、美桜以外は3人共半袖だ。


「やっぱり吉祥寺っていいよね。学生から大人までカバーしてるっていうかさ」


「わたしもそう思う。なんか丁度いいサイズ感? 新宿とか人多すぎるもん」


「僕も新宿は、ほとんど行かないよ」


 3人の吉祥寺に対する好感度は高いようだ。

 ちょっと過剰評価のような気もするが。


「女子大も近くにあるから、特に若い女性に人気のお店も多いからな」


「そうだよね。この間瑛太君のバイト先に行った時もそう思ったよ。若い女性客ばっかりだったじゃん」


「まあ確かにヴィチーノは、若い女性がメインターゲットなのは確かだ」


 話しながら歩いていたら、目的地の「さっぱりステーキ」に到着した。

 6時前だったが、案の定10人くらいの行列が出来ていた。

 15分ぐらい待っただろうか。 

 俺たちは4人席に案内された。


 俺と吉川は225グラム、美桜と星野は150グラムの肉を注文した。

 ライスとスープ、サラダをカウンターからセルフで運んでくる。

 ちなみにこれはおかわり自由で、学生には嬉しいかぎりだ。


 しばらくすると溶岩プレートに乗せられたステーキが運ばれてきた。

 俺たちはジュージューと音を立てるステーキに、小さく歓声を上げた。

 このボリュームでこの値段、そりゃあ行列ができるわけだ。

 俺は久しぶりに肉の塊を堪能した。

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