No.83:盗撮しちゃダメですよ
4月に入ると、いろいろと慌ただしくなってきた。
新1年生は、4月1日にめでたく入学式を迎えた。
新人オリエンテーションも終わり、最初の10日間ぐらいは履修科目の登録期間である。
俺たちは情報収集と、明日菜ちゃん、エリちゃん、海斗の3人に履修科目のアドバイスをするため、学校に集まることにした。
久しぶりの学食の、いつものエリアだ。
1年生3人を含む、6人が集結している。
やはりというか予想通りというか。
いつも以上の強い視線を感じる。
主に男子生徒からだが。
綾音、エリちゃん、明日菜ちゃんの三人が並んで座っている。
とにかく、この三人は目立っていた。
綾音だけでも目を引いていたのに、さらに美少女二人が加わった。
二度見をして通り過ぎていく男子生徒の多いこと多いこと。
「誠治先輩、やっぱ非公式サークルにしてよかったッスね」
「だろ? こうなることは、目に見えてたからな」
海斗と誠治は言葉を交わす。
確かに……学校の公式サークルにして新人勧誘とかしようものなら、大変なことになっていただろうな。
エリちゃんは、主に綾音から選択科目のことを訊いていた。
同じ学部の先輩がいるというのは、心強いだろう。
明日菜ちゃんと海斗は、主に俺と誠治が一般教養科目についてアドバイスした。
面白そうに見えて、実はとんでもなく単位が取りにくい科目とかもある。
ただ違う学部の専門科目まではアドバイスができない。
その辺がもどかしかった。
俺たち法学部2年生の履修科目の情報収集も心配だったが、それは杞憂だった。
顔の広い情報通の誠治が、他の友人や先輩からかなりの情報を仕入れてきてくれたからだ。
直接先輩の知り合いがいなくても、サークルや部活の先輩がいる同期の友達から、かなりの情報を集めてくれたようだ。
俺も綾音も、あっという間に履修科目が決まった。
午後3時を過ぎる頃、俺たちは学校からの最寄り駅に向かう。
「ところで誠治先輩。この非公式サークルのサークル名ってなんスか?」
「サークル名? サークル名って……そこまでは考えてなかったな」
海斗の質問に、誠治も頭をひねる。
ていうか、名前とか必要か?
「明青なんでも同好会」
「綾音、ダサすぎる」
俺は一蹴する。
「カタカナの方が、リア充感が出ませんか? ネイチャーサークルとか、フリーウォークサークルとか」
「あ、フリーウォークサークルっていいかも。『食べ歩き』の『歩く』部分が入ってますし」
エリちゃんの提案に、明日菜ちゃんが賛同する。
「よし、とりあえず『明青フリーウォークサークル(仮)』でどうだ? 他に良い名前が浮かんだら、順次提案してくれ」
中央線の車内で、この非公式サークルの名前が仮決定した。
そして誰も口にはしなかったが、代表は誠治。
これは決定でいいだろう。
最初に海斗が新宿で降りる。
西武新宿線に乗り換えだ。
「新宿の乗り換え、微妙に距離があってメッチャ面倒くさいッス」
海斗が学食でぼやいていたのを思い出した。
次の中野で綾音が降りた後、「さっき綾音さんとも話してたんですけどね」と前置きして、明日菜ちゃんが語りだした。
「やっぱり……朝のラッシュが凄いので、当面は短いスカートは履けないんです」
「えっと……何か関係あるのかな?」
「あの……痴漢とか……」
「あ、そうか」
俺はようやく理解した。
「最近だと、スカートの下から盗撮とかもありますからね」
「そうだよな。女の子は大変だ」
エリちゃんの説明に、誠治も納得だ。
「でも明日菜ちゃんの綺麗な足、見られないのかぁ。そりゃ残念だ」
「はい誠治さん、犯罪です」
「すいません」
あいかわらず誠治は学習効果が低い。
俺だって少しは残念だが、明日菜ちゃんが痴漢とか盗撮に遭うリスクを極小化するのが最優先だ。
明日菜ちゃんが荻窪、俺が西荻窪で電車を降りる。
夕方アパートでバイトへ行く準備をしていると、Limeのメッセージが。
明日菜:お好み焼きを食べに行くときは、できるだけミニを履いていきますからね。盗撮しちゃダメですよ。
「いやだから、俺は足フェチじゃない……はずなんだが」
ていうか、これって何アピール?
俺は返事のメッセージの文面に、頭を悩ませた。
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