No.82:松倉海斗
数日後、明日菜ちゃんとエリちゃんが無事運転免許を取得。
その翌日、東京地区は桜が満開となった。
明日菜:せっかくですから、皆でお花見にいきませんか?
明日菜ちゃんからのLimeを、すぐさまグループLimeに流してみた。
すると5人全員、翌日の午後なら集まれるという事になった。
早速翌日の13時、吉祥寺の駅前に全員集合。
しかもエリちゃんが「従兄弟を紹介したい」ということで、結局6人集合ということになった。
「こんにちは。エリの従兄弟の松倉
エリちゃんの紹介で、その彼は自己紹介した。
「あっ、お
「あ、例のお
「あれ、めっちゃ美味しかったよ! あの時はありがとうね!」
俺たちは口々に、正月にご馳走になったお節のお重のお礼を言った。
「いえいえ。気に入ってもらえたようで、よかったッス」
海斗は俺より少し背が低く、170センチぐらいか。
クリっとした可愛らしい目元に、ライトブルーメタルのメガネを装着している。
色白で優しい感じのする、俺や誠治とはまた違ったタイプだ。
俺と誠治と綾音も、自己紹介をした。
俺たちの話はエリちゃんや明日菜ちゃんから聞いているようだった。
「海斗君は、どこに住んでるの?」
「
聞けば鷺ノ宮は中野区らしいが、JR中野駅の綾音の家からだと30分以上は歩く場所らしい。
エリちゃんとは比較的家も近いので、もう子供の頃からよく知った仲とのことだ。
まあ従兄弟なんだから、当たり前ではあるが。
「海斗は昔、背も私より小さくて女の子みたいだったんですよ。それが今や、こんなになっちゃって……」
「こんなにってどんなだよ。でもエリは、中学の時から変わってないよな」
「そうだね。中2の時から身長はほとんど伸びてないよ」
「海斗、エリちゃんはその頃から男子に人気があったのか?」
誠治が口を挟む。
「それは俺の口からは、なんとも言いにくいッス」
「なんでよ!」
エリちゃんは不満そうだ。
まあ中学生の時だって、きっとポニーテールの似合う可愛い女の子だっただろうな。
「海斗、学部は?」
今度は俺が質問する。
「商学部ッス。先輩方、全員法学部でしたよね」
「ああ」
「エリまで法学部って、計算外だったぞ」
「仕方ないでしょ。たまたま商学部の希望者が多かったってだけだし。エリはどっちでもよかったけどね」
そんな話をしながら、俺たちは井の頭公園へ歩いていく。
公園内では桜が見事で、春のそよかぜに乗って花びらが舞い始めていた。
それにしても……
「平日なのに、すごい人だな」
「まだいい方ですよ。週末は、まっすぐ歩けないですから」
俺の愚痴を、明日菜ちゃんが拾ってくれた。
確かに桜は見事だ。
だからこの人出なんだろうけど。
池のほとりの売店までくると、先輩3人が後輩3人にアイスを奢ることにした。
池のまわりの柵にもたれながら、それぞれアイスを食べ始めた。
「ところで先輩方は、サークルとかには入られてないんスか?」
海斗が先日の明日菜ちゃんと同じ質問をしてきた。
「サークルには入ってないが、オレはこのメンバーで非公式のサークルを作ればいいんじゃないかと思ってるんだよ」
「非公式のサークル?」
誠治の話に、俺は訝しげに耳を傾ける。
「そう。まあなんでもいいけど、美味しいものを食べに行ったりとか、自然散策したりとか、スポーツやバーベキューをしたりとか、旅行に行ったりとか。そんなサークルはどうだ?」
「聞く限り、何でもありのサークルだな」
俺はすこし呆れた。
「でも誠治先輩、なんで非公式なんスか?」
「公式にしてみろ。それこそ入会希望者が100人は集まっちまうぞ。主に男どもが。それでもいいのか?」
「あーー」
「そうっスね」
「それはちょっと……」
「ウチは嫌だな」
「面倒くさいかも」
確かにそうだ。
この女性陣3人は、明らかに別格だ。
その美貌に引き寄せられる男子が、山のように集まってしまうだろう。
逆に誠治や海斗がいるから、女性陣も集まるかもしれない。
そっちの方は、誠治はあまり興味がないのか?
まあ俺はこのメンバーでこじんまりとやっていく方が、ずっと楽しい。
「先輩、俺も入会させてもらえるんスか?」
「もちろんだ、海斗。あの絶品お節のお礼に報いようじゃないか。それから夏の活動イベントの一つは、もう決定している」
「なんスか?」
「長野遠征だ!」
誠治は人差し指一本を立てて、高らかに宣言する。
しかしまあ……ここまで本腰入れて、俺の実家に来ることもないと思うが。
「いいわね、それ。面白そう」
「いいですね。なんか楽しみです」
「エリ、川とかで泳ぎたい!」
どうやら女性陣も楽しみのようで、完全な決定事項となったようだ。
「何もないけど、来てもらう分には全然構わないよ。部屋は空いてるし、狭ければ大広間で寝てもらってもいいしな」
問題は実家からの移動手段だな。
あちこち行くには、車が必要だろう。
どうするべきか……誠治と別途相談だ。
「ちょっと小腹が空いたな。ファミレスでも行くか?」
誠治の提案に、全員異議なしだ。
桜舞い散る井の頭公園の中を、俺たち6人はまたゆっくりと歩き始めた。
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