No.80:え? 小春は……
翌週の日曜日、3月25日。
時刻は12時過ぎ。
恒例のお好み焼きタイムだ。
先週はシフトが入ってしまったため、明日菜ちゃんとはしばらくぶりだった。
「こんにちはー」
「お邪魔します」
姉妹の可愛らしい声が玄関から聞こえてきた。
小春ちゃんにも来てもらうように、俺から明日菜ちゃんにお願いしておいた。
「瑛太さん、こんにちは。イケメンの石油王を紹介してもらえるって聞いて来ました」
「こら、小春」
「ははっ、二人共いらっしゃい」
小春ちゃんは、平常運転だった。
小春ちゃんは明日3月26日がお誕生日と聞いていた。
なので俺は1日早いプレゼントを用意していた。
「イケメンの石油王じゃないけどね。ちょっと待ってて」
俺は奥のクローゼットから、ウニクロの袋を持ってきた。
「はい、1日早いけど、誕生日おめでとう」
「えー、いいんですか? ありがとうございます」
小春ちゃんは嬉しそうに、そう言ってくれた。
「といっても、あんまり大したもんじゃないよ。それに……サイズがちょっと心配なんだ」
「え? 小春は……まだ、Bカップですよ?」
「いったい中身をなんだと思っているのかな?」
それに「まだ」ってなんだ?
中身はウニクロの、デザインTシャツ。
アメコミデザインの、ちょっとカッコいいヤツがあったので買ってみた。
サイズはレディースのS。
SSでも良かったかもしれない。
気に入ってくれるといいんだけど。
実は違うデザインのTシャツを、先週明日菜ちゃんにも渡している。
それはホワイトデーのお返し用だ。
とても気に入ってくれたようだった。
「瑛太さん、すいません。小春にまで気を使ってもらっちゃって」
「いや明日菜ちゃんはわかると思うけど、本当に大したもんじゃないからね」
ちなみに明日菜ちゃんの誕生日も、もちろん知っている。
驚いたことに、俺と1日違いだ。
明日菜ちゃんが8月24日、俺が翌日の25日だ。
「合同で誕生日パーティー、やりましょうね」と、明日菜ちゃんは笑って言っていた。
「はい、今日の差し入れです」
明日菜ちゃんは、ビニール袋を俺に差し出す。
「これは……バナナのいい匂いがするね」
「はい、バナナマフィンです。食べごたえがあると思います。それとお好み焼きの具は、豚バラと桜エビを持ってきました」
「おっ、それも美味しそうだね。いつも有難う」
俺は明日菜ちゃんから袋を受け取って、キッチンへ回る。
二人にはウーロン茶を出して、椅子に座ってもらった。
「明日菜ちゃん、運転免許の方は順調なの?」
「はい、明日教習所の卒業検定です。それが受かったら府中の運転免許センターの学科試験ですね。そこで合格したら、即日発行です」
「じゃあ今週中には取れそうなの?」
「はい、その予定です」
明日菜ちゃんが教習所へ行き始めたのって、2月の半ばだったよな。
ということは、1ヶ月半かかったということか。
案外時間がかかるんだな。
「実は俺も取りたいなって思っててね。ちょっと時期はまだわからないんだけど」
「そうなんですね。私の行ってる教習所、いいですよ。教官も優しい人が多いです」
「それは明日菜ちゃんだからじゃないかな?」
「女性の教官も何人かいますよ」
「そうなんだね」
まあ具体化したら、資料をもらうようにしよう。
俺は豚バラと桜エビを加えたタネを、ホットプレートの上で焼き始める。
程なくして、エビのいい匂いがしてきた。
「小春ちゃんは、もうすぐ高校生だね」
「そうですね。でも気分的にあまり変わらないですよ。中学の友達は、ほぼ全員上がってきますし、校舎も隣ですから」
「たしかにそうだね。私も高校へ入った時は、あまり変った感じがしなかったなぁ」
まあ小春ちゃんの場合、わからないことがあれば明日菜ちゃんに訊けばいいわけだから問題はなさそうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます