No.70:お年玉?
「お邪魔します」
「こんにちはー」
元気な女の子の声が二人分、俺の部屋に響く。
日曜日のお昼、明日菜ちゃんと小春ちゃんの姉妹がやってきた。
小春ちゃんにも声をかけてほしい、と言ったのは俺だ。
「こんにちは。小春ちゃんも、いらっしゃい」
「はい、瑛太さん。お年玉をもらいにきましたよ」
「もう、小春」
「ははは、小春ちゃんは相変わらずだね」
俺はエプロンのポケットから、小袋を取り出す。
「お年玉じゃないけどね……はい、小春ちゃん。これお守り。初詣に行った時に、小春ちゃんの分も買っておいたんだ」
「えーそうなんですか? ありがとうございます」
小春ちゃんは小袋を受け取って中を開けると、また一段と大きい歓声を上げた。
「なにこれー、可愛い!」
俺が渡したお守りは、例の新井薬師のランドセル型のお守りだ。
明日菜ちゃんが赤色を買ったので、俺が小春ちゃん用にピンク色のを買った。
「こんなの新井薬師にあるんですね。全然知らなかったです」
「でしょ? 私たちもおみくじ引いて偶然見つけたんだよ」
「へぇー、可愛いから早速学校の鞄につけよう。瑛太さん、ありがとうございます」
「気に入ってもらえて、よかったよ」
好評のようで、なによりだ。
俺はキッチンに周り、2人にお茶をだした。
「はい瑛太さん。今日の差し入れです。食パンですが、ナッツを入れてみました」
明日菜ちゃんは食パン一斤と、お好みの具材も持ってきてくれた。
今日の具材は前回小春ちゃんが来た時と同様、 キムチとチーズらしい。
「いつもありがとう。助かるよ。じゃあお好み焼きの用意をしようか」
「はいっ」
「小春、お腹空いちゃいました」
俺は急いでお好み焼きの準備をする。
ホットプレートを温めながら、タネの準備をする。
「小春ちゃんは、初詣に行ったの?」
「はい、4日の日に行ってきました]
「近所の神社とかに?」
「いえ、友達と一緒に吉祥寺で待ち合わせして武蔵野八幡宮へ行ってきました」
「ああ、サンロード商店街を抜けて左に入ったところだね」
「はい。混むだろうと思って三が日を外して行ったんですけど、それでもかなりの人でしたよ」
俺はお好み焼きのタネを持ってテーブルに運ぶ。
そしてホットプレートで焼き始めた。
チーズが焼ける、いい匂いがした。
「瑛太さん、私来月から運転免許を取りに教習所へ通うんです。エリと一緒に行くんですよ」
「え? そうなの?」
「はい。来月中旬に明青大の学部が決まるんですけど、そのあとですね。なんとか3月末までには免許が取れるといいんですけど」
「そうなんだ。俺もそろそろ取りたいなあって思ってるんだけどね……なかなかお金がかかるからなぁ」
「……そうですね、安くはないですよね」
「いずれにしても卒業までには取りたいとは思ってるんだ。就職して営業で車を運転する必要があるかもしれないからね」
「あー、そういうケースもあるんですね」
いろいろとお金がかかるな……。
頭の痛い問題だ。
焼き上がったお好み焼きをお皿に取り分ける。
全員でいただきますをして、食べ始めた。
このキムチ・チーズ入りは、3人のお気に入りになりそうだ。
「でもお姉ちゃんの運転する車とか、怖くて乗りたくないなぁ」
「まあ最初は怖いよね……でも運転しないとさ、いつまで経っても運転できないじゃない?」
「確かにそうだね」
俺は同意する。
「じゃあ瑛太さん、隣に乗って下さいね。ドライブデートしたいです!」
「ドライブデートって……その場合、男が運転するんじゃないの?」
「いいんですよ、この際どっちでも」
「どっちでもって……」
正直、俺もちょっと怖いかも。
「瑛太さん、生命保険掛けといて下さいね。受取人は小春で」
「ちょ、ちょっと。縁起でもないこと言わないでよ」
明日菜ちゃんがむくれた。
「だからコンビニのバイトも、教習所が始まる前に辞める予定なんですね。一応店長さんにも話しました」
「そうなんだ」
あのコンビニ、お客さん減るんじゃないかな。
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