No.64:プレゼント交換


 明日菜ちゃんとエリちゃんが、2人でケーキを切り分けてくれる。

 全員のピースの上に、イチゴが鎮座している。

 断面を見てもクリームとイチゴが入っていて、見るからに美味しそうだ。


 コーヒーと紅茶とケーキをセッティングして、全員でまた「いただきます」と言った。

 ケーキを口に入れた瞬間、全員から歓声が上がる。


「んー、美味しいです!」

「生クリームがふわふわですね」

「やっぱこの店の買ってきてよかった。奮発した甲斐があったよ」

「このサンタさん、オレ食っていい?」

「もみの木ならいいぞ」

「それ、プラスチックだろ!」


 俺は楽しかった。

 こんな仲間たちとクリスマスを過ごせるなんて、思ってもみなかった。


 最後はプレゼントの時間だ。

 俺は綾音にプレゼントを渡した。


「あ、暖かそう……」


 綾音へのプレゼントは、マフラーだ。

 薄茶色のベースに、黒と赤のチェックが入っている。

 スポーティーでちょっとボーイッシュな綾音に、似合うと思った。


「大事に使うね」

「ああ、そうしてくれ」


 綾音はエリちゃんにプレゼントを渡した。

 これが……まあ、お約束だった。


「うわー、こんなの履く日が来るのかな」


 下着だった。

 それも黒のレースで、ほとんど全部透けているようなヤツだ。


「まあ女の子同士だから、セクハラにはならないよね。それに結構高いんだよ、それ」


「はい、モノが良さそうなのは分かります」


「エリちゃん、今度オレと会う時、それ履いてきて」


「はい、アウト! 極刑ね」


「罪名は?」


「ワイセツ物陳列罪」


「どこがワイセツ?」


「顔面」


「ヒドくない?」


 綾音と誠治の寸劇のあとは、エリちゃんから誠治へのプレゼント。


「すいません、瑛太さんとかぶっちゃいました」


 プレゼントはマフラーだった。

 紺色のベースに、赤と白のストライプが入った上品な感じのマフラーだった。


「ありがとう。大切に使わせてもらうよ。でもやっぱりさっきのパンツ」


「警察行きます?」


「すいませんでした」


 次は誠治の番だ。 

 カバンの中から袋を出して、明日菜ちゃんへ手渡した。


「はい、オレのは実用的なものだよ」


「ありがとうございます」


 明日菜ちゃんが袋をあけると、中身は調理器具だった。

 泡立て器と、シリコンのヘラだ。


「へぇー、こんな形のヘラがあるんですね」


「そう。店員さんに聞いたんだけど、その左右対称のスコップ型のが使いやすいらしいんだ。あとその泡立て器も柄の部分が太くて、握りやすいらしいよ」


「ありがとうございます! これは早速出番がありそうです」

 明日菜ちゃんは、嬉しそうに笑った。


「では最後は私からですね」


 明日菜ちゃんから、俺は袋を受け取る。

 中身は手袋だった。

 ダークグレーのシンプルなデザインで、中綿の新素材が高い保温力を保つタイプのものだ。 


「瑛太さん、手袋しているところを見たことなかったので、いいかなと思って」


「ありがとう。まだこれぐらいの寒さだったら耐えられたからね。そろそろ欲しいと思ってたとこなんだ。早速今日の帰りから、使わせてもらうよ」


「はい、よかったです」

 

 明日菜ちゃんの安心したような笑顔に、俺もなごむ。

 この子の笑顔は、まわりの人を幸せにする力を持っている。

 俺はそんな気がした。

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