No.62:かなり嫌味なんだけど……


「そんなことないけど……でもやっぱ、面倒くさいじゃん」


「でも外食が多くても、そのスタイル維持できるんですね。羨ましいなあ」

 エリちゃんは変に関心している。


「いやそんな……人様に見せられるほどのもんじゃないよ」


「そんなことないです。出るトコ出てて、ウエストも細いし……羨ましいです」


「ちょっと明日菜ちゃんに言われると、かなり嫌味なんだけど……明日菜ちゃんなんて、ウエストとかウチの半分ぐらいしかないじゃない。腎臓とか1つしか入ってないんじゃないの?」


 明日菜ちゃんは、金に困った臓器提供者に仕立て上げられていた。


「い、いえ、そうじゃなくって……やっぱり男の人って、そういう……胸とかボリュームのある女性の方が好きじゃないですか」


「うん、それは否定できないな」


「ちょっとは否定しろよ」

 誠治のツッコミに、俺が更にツッコむ。


「まあ確かに人によるわよね。誠治はあからさまに巨乳好きだもんね」


「あたりまえだ。巨乳は正義」

 清々しいほど、潔かった。


「瑛太はどうなのよ」


「俺に振るなよ」


「どうなんですか?」


「明日菜ちゃんまで?」


 なぜか誠治とエリちゃんがニヤニヤしている。


「べつにそれほど固執はないぞ。その人に合っていればいいんじゃないか?」


「じゃあ、その……例の元カノは、どうだったの?」


「どうだったんですか?」


 なんで2人の息が合ってきてるんだ?


「どうだったって……」


 俺は思い返す。

 ちょうど昨日会ったばかりだ。

 細身の彼女は、それほど胸はない。

 よくコンプレックスを感じるって、高校のときに言っていた。

 でも俺は全然気にならなかった。

 別に胸で女の子を好きになるわけじゃないだろ?


「彼女は胸はない方だと思う。自分でも言ってたし。でも俺は全然気にならなかったぞ」


「ふーん、そうなんだね」

「そうだったんですね……」


「俺のことはいいんだよ。話題を変えてくれ」


「変えてくれって言われても……まあとりあえず、食べよっか」


 綾音の意見に、とりあえず全員賛成だ。

 ピザもサラダも美味い。


「誠治、いつもより高級なピザだな」


「当たり前だ。こっちのガーリックシュリンプピザは、いつものマルゲリータの1.5倍の値段だ。ありがたく食ってくれよ」


 わいわいと話しながら、テーブルの上の食べ物はみるみるうちに減っていった。

 ついにローストチキンまでもが、骨だけになってしまった。

 ただしその頃には、みんなもう満腹で動けないような状態だったが。


「もうお腹いっぱいです。これではケーキが入りません」

 明日菜ちゃんも、ギブアップ状態のようだ。


「とりあえずまだ時間あるし、ちょっと休憩しようよ」

 誠治はパーティールームを2.5時間で予約してくれていた。


「あ、それじゃあゲームでもやりませんか? 有料ですけどフロントでボードゲームを貸してくれますから」


「あ、それは面白いかも。ウチ、ボードゲームやってみたい」


 エリちゃんの提案に、綾音が乗っかる。

「じゃあ私達、見てきますね」と言って、JKコンビが2人で部屋を出ていった。


「本当、2人とも可愛いわよね」

 綾音がつぶやいた。


「綾音も負けてないだろ?」

 一応俺もフォローする。


「はいはい、フォローありがとね」


「素直じゃねーな。綾音、男子たちの間で人気あんの、自分でも分かってんだろ? オレらとばっかりつるんでるから、他の男達が声を掛けにくいんだよ」

 やさぐれる綾音に、誠治もフォローを入れる。


「そんなこといったってさぁ、つまんないんだもん。ウチはこの3人で遊んでる方が楽しいんだよ。それに来年はあの2人も後輩になるわけでしょ? だからウチ、来年はもっと楽しみかも」


「ふーん……だといいけどな」


「なに? 誠治」


「べっつにぃー」

 何かを含んだように、誠治は返した。

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