No.50:明青付属のリアル・アスナ


「2人とも、学校でモテるでしょ?」

 俺はなんとなく聞いてみた。


「んー、小春はお姉ちゃんほどじゃないですよ。もうお姉ちゃんなんか、『明青付属のリアル・アスナ』とか呼ばれてて。中等部にまでウワサが聞こえてくるんです」


 ああ、そう言えばそういうキャラクターがいたな。


「小春だって、男の子に何人も告白されてたじゃない」


「お姉ちゃんほどじゃないでしょ」


 やっぱり2人ともモテるんだな。


「小春ちゃんは、どんな男の子がタイプなの?」


「IT社長!」

 即答だった。


「ていうのは冗談で……小春もよくわかんないです、そういうの。でもやっぱり、カッコイイ人がいいなぁ」


「小春はイケメン好きだもんね」


「そう! やっぱりね、世の中イケメンが正義! イケメンに限る!」

 力強く断定した。


「えっと、瑛太さんは……その……」

 

「ん?」


「その……美桜さんて方は、どんな方だったんですか?」


「美桜さんって?」


「ん? まあ……高校の時の彼女だよ」


「なんでお姉ちゃん、そんなこと知ってんの?」


「ああ、この間話したからね」


 俺は言葉を探す。


「どんなって言われても……まあ、見た目はふわっとした感じかな?」


「可愛い系ですか、キレイ系ですか?」

 小春ちゃんの追求は続く。


「どっちかと言うと、キレイ系」


「お姉ちゃんよりも?」


「小春ちゃんのお姉ちゃんよりキレイな人って、そういないでしょ?」


「お姉ちゃんより、巨乳?」


 なんでそこ?


「いや、それはわかんないよ」


「んー、高校生でEカップってそこそこ大きいって思ってたけど、そうでもないのかな」


「ちょ、ちょっと小春! なに言ってんの!」


「大丈夫、さっき報告したとこだから」


「全然大丈夫じゃないでしょ!」


 明日菜ちゃんがプンスカと怒りだした。

 この姉妹は、本当に見ていて楽しい。


        ◆◆◆


「もう小春、変なこと瑛太さんに言わないでよ」


 瑛太さんのアパートからの帰り道。

 私は隣を歩く小春に、文句を言ってました。


「いーじゃん、いーじゃん。瑛太さん、絶対興味あったと思うよ。お姉ちゃんのブラのサイズ」


「そういう事じゃないでしょ!」

 全く反省の色がありません。


「でも瑛太さん、やっぱりすっごく優しいね。小春、ああいうお兄ちゃん、欲しかったな」


 やっぱり小春も同じようなことを思ってるようです。


「なんかさ、雰囲気お父さんに似てない?」


「あー……ちょっとそういうところ、あるかもね」


 私たちのお父さんは、娘2人にはとにかく甘いのです。

 家を空けることが多いせいもあるかもしれません。

 その分、お母さんがちょっと厳しいです。


 今日は……ロフトのベッドで、横にならせてもらいました。

 瑛太さんがいつも寝ている場所です。

 私も、その……隣に寝る日が、いつか来るのでしょうか。

 いろいろと妄想をしてしまいます。

 

 それに……私のこと、キレイって言ってくれました。

 今日はそれだけで、収穫十分です!

 私はウキウキした気分で、家に向かって歩いていました。

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