No.49:2人で寝るには……


 俺が背中を向けている間に、二人はハシゴを登っていく。

 明日菜ちゃんの「はい、いいですよ」という声で、俺は振り返った。

 お好み焼きの準備を続ける。


「へーおもしろ~い。こうなってるんだ。高いね」


「うん、落ちるとケガするね」


「よいしょっと」


「ちょっと! 小春、布団の上に寝ちゃだめでしょ!」


「いいじゃん、ちょっとだけ。お姉ちゃんも寝てみたら?」


「え? そ、そう? じゃあ、ちょっとだけ……」


「ねっ。気持ちいいでしょ?」


「うん……でも……2人で寝るには、ちょっと狭いのかな……」


「お姉ちゃん、なに言ってんの?」


「べ、べつに何でもないから!」


 なんだかロフトから、わいわいと2人の可愛い声が聞こえてくる。

 女の子2人だと、賑やかだな。


 しばらくして、「降りてもいいですか?」と明日菜ちゃんの声。

 俺はまた後ろを向いて声をかけ、2人に降りてきてもらった。


「ロフト、どうだった?」


「面白かったです! でもお姉ちゃん、一人で興奮してました」


「してないから!」

 真っ赤な顔で、明日菜ちゃんは反論してきた。


「ちょ、ちょっと、お手洗いお借りしていいですか?」


「どうぞどうぞ」


 明日菜ちゃんは、クールダウンの時間が必要なようだ。



「瑛太さん瑛太さん、朗報ですよ」


 明日菜ちゃんがトイレに入ると、小春ちゃんがニヤニヤしながら俺に小声で話しかけてくる。


「この間お姉ちゃん、下着を買いに行ったんです」


「そ、そうなんだ」


「お姉ちゃん、めでたくDカップからEカップに昇格しました!」


「そ、それは昇格になるのかな」

 この子はきっと、こういうキャラなんだろうな。


「そうです! 乙女の胸が大きくなるんですよ。それはもう、立派な昇格です」


「でも、胸の大きさだけじゃないだろ?」


「形も、ってことですか?」


「いやそうじゃなくて」

 何の話だ?


「でもお姉ちゃん、羨ましいです……小春も高校に入れば、大きくなるのかな……」


「うん、まあ、頑張ろうか」


「あー! 馬鹿にしてますね!」


「してないから!」

 ちょっと面倒くさい。


 ちょうどそこへ、明日菜ちゃんがトイレから戻ってきた。


「?……瑛太さん、どうしたんですか?」


「ん? なにが?」


「顔が赤いです」


「えっ……」


「さあ、なんでっかなー」

 小春ちゃんは、楽しそうである。


        ◆◆◆


「んー! おいひいれふ」


「小春、ちゃんと飲み込んでから話しなさい」


「どの口が言うかな?」


 今日のお好み焼きは、明日菜ちゃんたちが持ってきてくれたキムチ・チーズ入りだ。

 小春ちゃんは辛いのは大丈夫か聞いてみたところ、持ってきたキムチだったら大丈夫だとのことだった。

 これが思いのほか美味しかった。

 お好み焼きも、奥が深い。


「でもさ、小春がお姉ちゃんと一緒に行くって言った時、お母さんは安心してたと思うな」


「そ、そんなこと……」


 まあそうなのかもしれないな。


「でもお母さんも小春も、本当にびっくりしたんですよ。お姉ちゃん今まで男の人と付き合ったことないし、ましてや家に連れてくるなんて」


「え、瑛太さんはそういうんじゃないから。その……付き合ってるとか」


「まあそうだね。来年になれば、先輩後輩になるんだろうけど」


「あれ? ひょっとして小春が大学に入ったときは、瑛太さんは卒業されてるんですね」


「ん? ああ、そうなるかな」


「それも小春が明青大に入学できたら、でしょ?」


「もー……せっかく楽しくお好み焼き食べてるんだから!」

 小春ちゃんが、頬を膨らました。


 俺は楽しかった。

 女兄弟がいなかったので、いたらこんな感じだったのかなと。

 特に小春ちゃんが妹キャラ全開だ。

 これはこれで、すごく可愛い。

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