No.31:スカウトだろ?


 週末の日曜日。

 お昼時間に、明日菜ちゃんがやってきた。


「今日はですね、桜エビを持ってきました。あとスコーンも」

 そういって、ビニール袋を俺に手渡してくれた。


「おー桜えび、いいねぇ。さっそくお好みの焼きの中に入れようか」 


「はい! お願いします」


「スコーンもありがとう。先週もらったマフィンも、全部いただいたよ。美味しかった」


「本当ですか? でも朝から甘いものはどうかなって思って……だから今日は、スコーンにしました」


「ありがとう。ジャムとか塗って、いただくよ」


「はい!」


 今日の明日菜ちゃんは薄茶色のチェックのフレアキュロットで、相変わらず健康的な生足をさらけだしている。

 上は白のブラウスに、薄いピンクのカーディガン。

 清楚さが全面に出ていて、目が眩みそうだ。


 それにしても……本当にスタイルがいい。

 股丈とか、身長の半分ぐらいじゃないかって思うくらい。


「明日菜ちゃんて、本当にスタイルいいよね」


「ふぇっ? あ、ありがとうございます」

 足を少し内股にして、モジモジする姿が可愛い。


 俺はキッチンで、お好み焼きのタネを作り始めた。

 頂いた桜エビも、その中に混ぜる。


「歩いてても、よく声をかけられるでしょ?」

 俺はタネをかき混ぜながら聞いた。


「んー、高校に入ったばかりの時、よく渋谷とか原宿とか行きましたから、その時はそうでしたね。最近はもう、あまり行かなくなりましたけど」


「行かなくなったんだ」


「はい。その時、よく名刺を渡されたんですね」


「名刺?」


「ええ。なんとかプロダクション、なんとか事務所とか書いてあって」


「へぇー」


 凄いな。

 いわゆるモデルとか、芸能プロダクションのスカウトだろ?


「それで普通に断れればいいんですけど、中にはしつこい人とかもいて……」


「そうなんだ」


「はい。ずーっと追っかけてきて、『ご両親に会わせてくれ』とか言ってくるんです。なんだか怖くなっちゃって」


「うわー、それは怖いなー。でもまあその人達も、それだけ本気だったってことだろうけど」


「私そういうの、興味ないんですよ。エリとかは『やればいいのに、もったいない』って言うんですけどね」

 

「なるほどね。まあご両親も心配するだろうしね」


 俺はお好み焼きのタネをテーブルの方へ運ぶ。

 ホットプレートは、もう温まっているだろう。


 俺はタネをホットプレートの上に注ぐ。

 ジューッと音がする。

 しばらくすると、香ばしい匂いが立ち込めた。


「あ、エビのいい香りがしますね」


「ああ、そうだね。桜えび入りのお好み焼きって、贅沢だな」


「そうなんですか?」


「ああ。桜えびって、高いんだよ」


「そうだったんですね。静岡の方からの頂き物らしいんですけど……」


 ひっくり返してから、蓋をして蒸す。

 それがうちの実家の流儀だ。


 出来上がったお好み焼きにソースを塗ってかつおぶしをかけて、お皿に取り分ける。


 二人でいただきますと言って、お好み焼きを頬張った。


「やっはひ、おいひいへふ」


「ちゃんと飲み込んでから言おうか」


「はひ」


 たまに明日菜ちゃんは、年相応、いやそれ以下の子供になる。

 妹がいたら、こんな感じなのかな。


        ◆◆◆


※告知です。

 明日6月20日の17時より、新作がスタートします。

 (下記リンクは、明日の17時から有効となります。)


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席替えで隣になったイケメン御曹司とは、もうこれ以上何も起こらないはずだった。

https://kakuyomu.jp/works/16816452220943594961 

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 俺様でイメケンボッチの社長御曹司と、家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン。

 素直になれない二人の身分差ラブコメディーです。

 初日は5話投稿となります。

 ご期待下さい!

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