No.23:会いたいです……


 餃子パーティーは、夜の9時前にはお開きとなった。

 3人とも満腹だったが、最後に綾音はデザートのモンブラン、俺と誠治はアイスで締めくくった。


 綾音は西荻窪駅まで誠治と歩いて帰っていった。

 後は電車に乗って中野からすぐだから、大丈夫だろう。


 俺はホットプレートと食器類を洗い終えて、一息ついていた。

 シャワーでも浴びようかと思っていたら、スマホが震えた。

 

 明日菜:こんばんは。音声通話したいのですが……今お時間大丈夫でしょうか。


 明日菜ちゃんからだ。

 いいよ、と返事を打つと、すぐに音声コールがかかってきた。


「瑛太さん、こんばんは」


「こんばんは。今餃子パーティー終わったとこだよ。誠治も綾音も帰ったとこ」


「そうだったんですね。餃子美味しかったですか?」


「ああ、飛車角の生餃子を買ってきて、ホットプレートで焼いたんだ。美味しかったよ」


「えーー、そんなのがあるんですね」


「それと昼間はゴメンね。なんか綾音が壊れちゃって……びっくりしたでしょ?」


「えっ? は、はい、ちょっと。でも綾音さん……とっても綺麗な人ですね」


「ん? ああ、そうかな。大学でも人気あるし。でも綾音は明日菜ちゃんのこと、可愛い可愛いって、ずっと言ってたよ」


「そんなこと……綾音さんのほうが、ずっと綺麗です。それに……」


「ん?」


「む、胸も大っきかったです」


「ははっ、まあそうかな。綾音に言っとくよ」


「はい……えっと、お電話したのはですね……実は瑛太さんのところへ行っていたことが、お母さんにバレてしまいまして……」


「えっ……そうなんだ」


「それで、うちのお母さんも明青OGなので、是非瑛太さんを家につれてらっしゃいって言われまして」


「えっ、何? そういう展開?」


「はい。でも今すぐってわけでもなくてですね、また落ち着いてからでもいいと思うんです」


「わかった。そうだね、一度ご挨拶した方がいいかもしれないね」


「なんだかすいません……それとあまり帰りは遅くならないようにって、言われてしまいました」


「はは、そりゃそうだろうね。わかった、それじゃあ今度はお昼間にお好み焼きやろうか?」


「えっ! 本当ですか?」


「俺は明日の土曜日は昼も夜もバイトが入ってるから、日曜日のお昼時間とかどうだい?」


「はいっ! 私も日曜日はバイトはお休みです。遊びに行ってもいいですか?」


「ああ。お好み焼きの準備をして、待ってるよ」


「やったぁー! 楽しみです!」

 受話器越しの声が、大きくなる。


「ははっ、そんなにお好み焼きが好きなの?」

 俺はちょっとふざけて訊いた。


「それもありますけど……」

 明日菜ちゃんの声が、少し小さくなった。



「瑛太さんに会いたいです……」



「明日菜ちゃん……」

 俺の心臓が、トクンと鳴る。


 美少女からの不意打ちだった。

 この子は……ストレートだな。

 素直で、まっすぐだ。


「えっ? あ、その、ふ、深い意味は特にないですから! す、すいません……」

 明日菜ちゃんの声が、あわあわしている。


「うん、わかった。とりあえず準備しておくから。楽しみにしてて」


「はい! ありがとうございます! 私も何か持っていきますね」

 

 最後は弾むような明るい声に変わった。

 彼女の笑顔が、スマホ越しに伝わってきたような気がした。

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