No.12:あ、あんまり見ないで下さい……


 俺は焦っていた。

 ずぶ濡れのJKにシャワーを浴びさせてしまった。

 これ一歩間違えば、犯罪かも……。

 罪名が思い浮かばないが。


 それに俺のTシャツとスウェット上下って……よかったのか?

 もちろん洗濯済みのやつだけど。

 とりあえずここにいる間だけだから、我慢してもらおう。


 雨に濡れた、彼女の体躯を思い出す。

 細いウエスト。

 真っ白な生足。

 それに……ブラの模様まで透けて見えてしまっていた。


 だめだ!

 俺は頭をブンブンと左右に振った。


 明日菜ちゃんはシャワーから出てきて、ドライヤーをかけている。

 まずは洗濯機の中の服を乾燥させないと。


 俺は部屋の奥から、物干しスタンドとハンガー、それと小さな白家電を持ってきた。


「明日菜ちゃん、ちょっといいかな?」


「はい!」


「ドライヤーかけ終わったら、洗濯物をここに干して風呂場に入れてくれるかな? そしたらこれを正面にセットしてくれる?」


 俺は布団乾燥機を差し出した。


「これでパワーモードっていうのがあるから。これを使えば、1時間で半乾きぐらいにはなるんだ。あとはドライヤーかアイロンを使えば、家には帰れるよ」


 俺はこの布団乾燥機を、たまに洗濯物を乾かす時に使う。

 ただし消費電力が大きいので、電気代も食うが。

 今は非常事態だから、そんなことは言ってられない。


「俺がやってもいいんだけど……その……下着とかあるだろ?」


「えっ? あ、はい……」


「だから使い方を教えるから、頑張って自分でセットしてもらえるかな?」


「はい! ありがとうございます」


 俺はそう言って、明日菜ちゃんに布団乾燥機の使い方を説明した。

 一応浴室の換気扇は回しておく。


「明日菜ちゃん、野菜スープとか好き?」


「えっ?」


「昨日ミネストローネを作って残りがあるんだけど、飲まない? 体あったまるよ」


「そうなんですね。是非いただきたいです」


「わかった。じゃあ温めておくよ」


 俺はそう言って、キッチンへ戻る。

 温める、といってもレンチンするだけだ。

 マグカップ2つ分のミネストローネを用意して、電子レンジの中に入れた。


 レンジの電子音がするタイミングで、明日菜ちゃんが戻ってきた。


「なんだかいろいろとすいませんでした」


「体、大丈夫?」


「はい、シャワーで大分温まりました」


 部屋のキッチン前に小さなテーブルと、椅子が2つある。

 明日菜ちゃんに、そこに座ってもらった。


 レンジからミネストローネを2つ取り出して、スプーンと一緒にテーブルの上に乗せた。

 俺は明日菜ちゃんの向かい側に座る。


「熱いかもしれないから、気をつけてね」


「ありがとうございます。いただきます」


 2人でミネストローネを飲む。


「おいしい……」


「よかった。実家から定期的に野菜と米を送ってくるんだよ。それで野菜は傷む前に、こうやってスープを作ることが多いんだ。あとお好み焼きとかもね」


「あっ、お好み焼き、美味しそうです!」


「今度食べにくるかい?」


「え? いいんですか?」


「もちろんいいよ。また連絡するね」


 俺は改めて明日菜ちゃんを正面に見据える。

 シャワー上がりの彼女は、すっぴんだ。

 でも白い肌がとても綺麗で、二重の目元も愛らしい。

 パーツの位置も整っていて、芸能人顔負けの美少女だ。


 そんな俺の視線を感じたのだろうか。

 彼女は頬を少し紅潮させ、うつむいてしまった。


「あ、あんまり見ないで下さい……すっぴんなので、恥ずかしいです」


「……すっぴんでそれだけ可愛いんだから、メイクされたらこっちが困っちゃうよ」


「……もぅ……」


 明日菜ちゃんは顔を両手で隠してしまった。

 耳の先まで真っ赤だ。


「持ってきてくれたのって、ケーキだよね? 一応冷蔵庫の中に入れといたよ」

 話題を変えないと。


「えっ? あ、はい、ありがとうございます」


「じゃあスープの後にいただこうか?」


「私もいいんですか?」


「もちろんだよ、一緒に食べよう。紅茶とコーヒー、どっちがいいかな? りんごジュースもあるけど」


「それじゃあ、紅茶をいただけますか?」


「了解」


 スープを飲み終えた後、俺はキッチンに回って湯沸かしポットのスイッチを入れた。

 紅茶とコーヒーの用意をする。

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