No.11:大失敗です……
想定外です……。
大失敗です……。
百点満点中、マイナス1万点です……。
私は今、瑛太さんのアパートで、シャワーを浴びています。
なんでこんな事になってしまったんでしょうか。
学校が終わって、急いで家に帰ってきました。
フレアのミニスカートに白のブラウス。
軽くメイクもしました。
清楚さをアピールしないといけません。
鏡で全身をチェックしました。
いいと思います。
生足もキレイって、思ってくれるでしょうか。
ケーキを手に持って、ちょっとドキドキしながら家を出ました。
だから天気予報を見る余裕なんて、全然ありませんでした。
5分ほど歩くと、あっという間に暗雲が立ち込めました。
足取りを早めます。
でも、もう5分歩いたところで……。
ドゴォォォォーーン!!!
「きゃぁーーっ!」
滝のような雨が降ってきました。
私はどこか雨宿りできそうなところを探しました。
でもこの辺は住宅地、そんな場所も見当たりませんでした。
いったん家に戻りましょうか?
でもここはちょうど中間地点です。
雨も通り雨で、すぐにやむかもしれません。
それに、瑛太さんが待ってくれています。
私は雨宿りできそうなところを探しながら、どんどん走りました。
雨足は強くなるばかりです。
結局雨宿りは1度もできず、瑛太さんのアパートについてしまいました。
瑛太さんは外で待っていてくれました。
雨で体温が奪われ、私は寒くて少し震えていました。
そんな私を心配して、瑛太さんは部屋へ引き入れてくれました。
「明日菜ちゃん、シャワーを浴びたほうがいい。服は全部ネットに入れて、とりあえず脱水にかけよう」
そう言って浴室のとなりにあった洗濯機のボタンを押して、脱水モードにしてくれました。
「着替えは……緊急事態だから、俺のTシャツとスウェット上下で我慢してくれるかな?」
瑛太さんは部屋の奥のクローゼットから、少し厚手のスウェット上下とTシャツ、それからバスタオルを出してきて、私に手渡してくれました。
「服をネットに入れて洗濯機に入れたら、このボタンを押してね。そのままシャワーを浴びて、温まってくるといいよ」
顔を少しクシャッとして笑って、瑛太さんはそう言ってくれました。
ああ、この人はやっぱり優しいな……。
その笑顔だけで、少しだけ心が暖かくなりました。
それでも体は冷えて仕方ありません。
結局着ているものを全部脱いで洗濯機に入れ、遠慮なくシャワーを使わせてもらうことにしました。
いきなり男の人の家で、シャワーを使わせてもらうことになりました。
展開が早すぎます。
いえ、そういう展開ではないですよね。
でも脱水中の服は、どうやって乾かせばいいのでしょうか。
いろいろと考えないといけないことが多くて、頭の中がパニックです。
どれくらいシャワーを浴びていたでしょうか。
体が大分温まってきたところで、シャワーを止めます。
渡されたTシャツとスウェットの上下。
瑛太さんの服です。
どうせなら、彼シャツがよかったです……。
いやでもノーブラ・ノーパンで着るんですよね?
……やっぱりスウェットでよかったです。
生地は厚手のやつですから、細かいラインは出ないと思います。
Tシャツを着て、その上からスウェットを着ました。
ブカブカです。
袖から手がでません。
仕方がないので、足元も袖も2回くらい折り曲げました。
洗面台の前に、ドライヤーがありました。
「あの……ドライヤー、お借りしてもいいですか?」
「ああ、もちろんどうぞ」
洗面台の鏡に向かいながら、ドライヤーをお借りしました。
鏡に映っていたすっぴんの私は、ちょっと暗い顔をしていました。
あの家を出る前の浮かれた私は、どこへいったのでしょうか。
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