No.09:頑張った、私!


「いったいどんなメッセージを送ればいいんだよ……」


 誠治から言われて数日経った。

 俺はまだ明日菜ちゃんに連絡を取れずにいた。


 相手はJK。

 それもとびっきりの美少女だ。

 変なメッセージを送ろうもんなら、鼻で笑われるかもしれない。

 まあそんな子じゃないとは思うが。


 大学のキャンパス内で、午後の休み時間。

 俺はLimeで明日菜ちゃんのトーク画面を見ながら、ぼんやりと考えていた。


 その時、スマホからシュポッという音が聞こえた。

 

「ん?」


 よく見ると、ちょうど開いていたトーク画面に、新たなメッセージが。


 明日菜:こんにちは。昨日ケーキを焼いたんですけど、多すぎるので半分もらっていただけませんか? 今日の夕方にでも持って行きます!


「うわぁ……」


 逆に向こうから連絡をもらってしまった。

 でも……正直ありがたい。

 しかも明日菜ちゃんだって、今日学校だよな?

 学校の休み時間に送ってくれてるんだ。


 今日はバイトも入っていない。

 授業が終わってすぐ帰れば、5時にはアパートに着くだろう。

 

 俺は急いで返事を打つ。


 瑛太:ありがとう。でも本当にいいの? 是非食べたいです。夕方どこかで待ち合わせにしようか?


 明日菜:ご迷惑でなければ、瑛太さんのアパートまで持っていきますよ。近いですし、歩いて行きます。


「えっ? いいのかな……」


 彼女は俺のアパートを知っている。

 だから来てもらう分には問題ない。


 ただ……。

 玄関で受け取って「はい、サヨウナラ」は正しい選択肢ではないような気がする。

 部屋に上がってもらって「一緒にケーキを食べようか」までの展開もあるかもしれない……。


 俺は自分の部屋の状況を思い出す。

 部屋の中は、そんなに散らかってはいないはずだ。

 寝床はロフトの上だから、問題ないだろう。

 洗濯物は外に干してある。


「多分、大丈夫だな……」


 もちろん彼女が「帰ります」と言ってくれれば、それはそれでいいのだが。


 俺は返事を急ぐ。


 瑛太:ありがとう。本当にいいの? じゃあお言葉に甘えて、アパートで待ってます。5時ぐらいでいいかな?


 そう打つと、「よろしくお願いします」と頭を下げるクマのスタンプが帰ってきた。


        ◆◆◆


 やったーー!やったーー!頑張った、私!

  

 考えに考えた挙げ句、できるだけシンプルなメッセージを送りました。

 あんなに考えていたのが、バカみたいでした。

 そして……さっそく今日の夕方です!


 さて、何を着ていくかですよね。

 できるだけ可愛い格好を見てもらいたいです。

 やっぱり清楚系でしょうか?

 大人っぽい格好の方が、瑛太さんはお好きなんでしょうか?


 でもとりあえず最初の私服ですから、清楚系が無難ですよね。

 そしてスカートはミニです。

 ミニ一択です。

 ベージュピンクのフレアミニがありました。

 それにしましょう。

 生足で勝負です!


 上は……白のブラウスですかね。

 胸元に可愛いリボンがついてるヤツです。

 一応下着も……替えておきましょう。

 ニオイが気になります。

 

 今は授業中ですが、先生が何を話しているのか全然頭に入ってきません。

 それぐらい私は浮かれていました。

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