No.07:これはチャンスですよね?
瑛太さんと、一緒に帰ってきました。
いっぱいお話ができました。
さりげなく道路側を歩いてくれて……守ってくれているみたいで、キュンってなっちゃいました。
案外私はチョロいのかもしれません。
住んでるアパートも、わかっちゃいました!
それと……下着はボクサーパンツでした……。
瑛太さんは長野出身で、素朴で素敵な人です。
吉祥寺のレストランでバイトをしてるって言ってました。
今度そのレストランにも行ってみたいです。
ギャルソンエプロンとかしているんでしょうか?
ぜ、絶対にカッコいいですよね!
写真とか撮っちゃいそうです。
家では自炊しているらしいです。
自立している大人の雰囲気です。
甘いものも好きだ、と言ってました。
でも肝心のことは聞けませんでした。
その……彼女さんとか、いるんでしょうか。
あんなに素敵な人なんですから、彼女さんがいても不思議ではありません。
でも、もしいたとしら……3日ぐらい寝込む自信があります。
さりげなく、Limeで聞いてみるべきでしょうか。
私自身、いままで男の子と付き合ったことがありません。
学校は共学で、いままで何人も男の子から告白されたことはあります。
でも全部お断りしてきました。
なんていうか……同学年の男の子たちって、幼稚で子供っぽい感じが目立つと言うか。
あるいは、なんかギラギラしてて危険を感じる男の子も多かったりして。
全然心開いて話せる気がしませんでした。
でも……瑛太さんは大人です!
とても1コだけ年上とは思えません。
一緒にいるだけで、包まれるようなやさしさというか、安心感というか……。
こんな気持ち、初めてです。
せっかく住んでいるアパートがわかったんです。
それも私の家から徒歩20分ぐらいです。
これはチャンスですよね?
甘いものでも作って持っていったら、食べてくれるでしょうか?
◆◆◆
「オーダー入りまーす! 3番、タラコクリーム1、イカスミ1、シーザー1、マルゲリータ1です!」
俺は厨房に向かって、大声でオーダーを通した。
オステリア・ヴィチーノ。
吉祥寺の隠れ家的なイタリアンレストラン。
そこのフロアで、俺と誠治は今バイト中だ。
平日とは言え、7時近くになるとかなり混雑する。
パスタとピザが売りで、手頃な価格で楽しめる。
学生も多いこの辺りでは、まさにうってつけのお店だ。
ひたすらオーダーを聞いて厨房に通して、運んで片付ける。
時間を見て、お冷を入れに行く。
様子を見ながら、会計にも回る。
これの繰り返しだ。
8時半を過ぎた頃、客足はようやく一段落した。
厨房の影に隠れて、俺と誠治は水分を補給する。
「いやあ、今日も忙しかったね」
そう笑顔で語りかけて来たのは、
他大学の4年生で、バイト仲間のリーダー的存在だ。
もうこの店でのバイト歴も長い。
「はい、それに団体さんが2組いましたしね」
「ああ、オレもオーダーを何度も取りにいかされたな。一度に注文してくれればいいのに……」
疲れのせいもあって、俺も誠治も愚痴り気味だ。
「あはは、まあそう言わずに。売上自体には、貢献してもらってるんだから」
そう笑う詩織さんは、身長が俺とそんなに変わらない。
多分170センチ以上あるだろう。
長い黒髪を、バイト中はポニーテールにしている。
顔の彫りも深く、綺麗というよりはイケメンなのだ。
宝塚の舞台に立っていたとしても、全く違和感はないだろう。
4年生の詩織さんは、大手商社への就職内定が決まっている。
詩織さんには、ここでバイトを始めた時から俺も誠治もすごくお世話になっている。
あと半年しか一緒に働けないと思うと、寂しい限りだ。
「さあ、それじゃあ2人はそろそろ片付けの方に入ってくれないかな? オーダーは私が取るからね」
「わかりました」「了解っす」
俺たち2人は、あらためて気合を入れ直した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます