No.06:一緒に歩いて帰ってもいいですか?


 マクドの2階で話し込んでいたら、夕方の結構な時間になってしまった。

 俺たちは解散することにした。

 誠治のTシャツは、また次回だな。


 俺のアパートは西荻窪から徒歩10分。

 吉祥寺から西荻窪はJRで1区。

 だからここからアパートまで歩いて帰っても、そんなに遠くはない。

 

 誠治は三鷹だから逆方向。

 エリちゃんは、母親に車で迎えに来てもらうらしい。


「明日菜ちゃんは、あのコンビニから家は近いの?」


「はい、歩いて10分ぐらいです」


「そっか、じゃあご近所さんだね。あのコンビニから俺のアパートはすぐだから」


「えーっ、やっぱりそうだったんですね」


  明日菜ちゃんは、嬉しそうに笑った。


「俺、ここから歩いて帰るけど、どうする? 明日菜ちゃんも親御さんにお迎えに来てもらうのかな?」


「い、いえ、私も……一緒に歩いて帰ってもいいですか?」


「もちろんだよ」


 俺たちはマクドを出て、それぞれ家路に向かった。

 俺の横には濃緑色のブレザーを来た、美少女JK。

 改めて見ると、本当に可愛い。

 スタイルも……短めのスカートの下に見える足は締まっていて、足首もキュッと細い。

 ウエストなんか、俺の半分ぐらいじゃないか?

 胸だって……いや、胸は綾音の方が……じゃなくって、ウエストが細いせいか双丘の主張もかなり目立つ。


 俺は隣を歩くのが、少し恥ずかしくなった。

 アイドル並みの美少女と、一緒に歩いているわけだから。


「瑛太さんは、ご出身はどちらなんですか?」


 そんな俺の緊張を解きほぐすように、明日菜ちゃんは聞いてきた。 


「俺の実家は長野だよ。長野の田舎街」


「へぇー、長野ですか。いいですね。食べ物とか美味しそうです」


「うん、食べ物は美味いよ。でも冬は寒いし雪も多いし、大変だよ」


「そうなんですね。私はずっと東京だから、そういう田舎の方とかちょっと憧れます」


「憧れるほどのものは無いけどね」


 そんなたわいもない話をしていた。


「ところであのヤンキー、またお店に来たりとかしてない?」


「えっ? あ、はい。あれから来てません。あの時は本当にありがとうございました」


「いやいや、さすがに俺も我慢ならなかったからね」


「あの時店長もいなかったし、バイトの先輩もバックヤードにいたから……私もどうしていいか分からなくって……」


「でも監視カメラと通報ベルのことは、ちゃんと覚えておいたほうがいいよ」


 レジのカウンターの下には、警備会社への通報ベルボタンがあるはずだ。


「はい、あれから店長さんにも教えてもらいました」


「そっか」 


 俺たちは歩きながら、いろんな話をした。

 そしてあっという間に、俺のアパートの裏手に着いてしまった。


「俺のアパートはここなんだけど……よかったら家まで送るよ?」


「え? あっ、いいです。大丈夫ですから」


「そう? じゃあここで」


 強引に家まで送るのは、マズいよな。


「えーっと……瑛太さんの部屋って、どこか聞いてもいいですか?」


「ん? ああ、2階の一番東側。ほら、あそこ」


 俺は自分の部屋を指差す。

 まあこの子なら、ストーカーとかになったりしないだろう。


「あの洗濯物が干してあるところですか?」


「そう。あのグレーのボクサーパンツが干してあるとこ」


「そ、それは言わなくていいです……」


 明日菜ちゃんは、急に顔を赤らめた。

 なにこれ、可愛いんだけど。

 男慣れしてない感じが伝わってくる。


「それじゃあ、色々とありがとうございました。えーと……またLimeしてもいいですか?」


「もちろんだよ。気をつけて帰ってね」


「はい! ありがとうございました!」


 元気よく返事をして、明日菜ちゃんは帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る