No.04:マクドの2階にて


「本当にありがとうございました! 2度も助けてもらっちゃいました……」


 マクドの2階で清楚系美少女は、そういって頭を深々と下げた。


 駅の改札口から少し離れた俺達は、誠治の「ねえねえ、ちょっと皆んなでさ、何か食べに行こうよ。瑛太もいいよね?」という提案に乗っかることにした。

 ちょうど彼女たちも、何か食べに行こうか考えていたところに声をかけられたらしい。


 4人でマクドに入り、俺は清楚系美少女に、誠治はポニテ女子に奢ることになった。

 一応先輩だしね。


「瑛太が言ってたコンビニの美少女店員って、この子だったんだな」


「お、おいっ、誠治!」


 本人を目の前にして、言うことじゃないだろ。

 その本人は「えっ?」と呟いた後、うつむいてしまった。

 頬が薄いピンク色だ。


「本当にありがとうございました。いつもはちゃんとあしらえるんですけど、今日のあの2人、ちょっとしつこくて……」


「うーん、そりゃこんなに可愛い2人だったら、ちょっとしつこくなる気持ちもわかるかなー」


 ポニテ女子の言葉に、誠治はきっちり持ち上げて返す。

 このチャラさが、逆にモテる秘訣なのか?


「それにその制服、もうちょっとしたらオレたちの後輩になってるかもしれないよね? これは偶然じゃない! 運命だ!」


「えー? そうだったんですねー」


 歯の浮くような誠治のセリフに、ポニテ女子がなぜか乗っかる。


「どういうこと?」


「この濃緑色こみどりいろのブレザー、知らないの? 彼女たちは明青大付属高の生徒だよ」

 俺のシンプルな疑問に、誠治は即答する。


 そんなこと、よく知ってたな。


「一応私達も、来年は明青大に進学する予定でいるんですよ。推薦、というか……まあエスカレーターですね」


「ああ、そうだったんだね。てことは、高3なんだ」


「はい、そうなんです。えーっと……先輩たちは、何年生なんですか?」


「俺たちもまだ1年。だから1コしか違わないね」


 俺は正面の黒髪美少女と言葉を交わす。

 

 俺はちょっと緊張していた。

 色白で透明感のある肌、つやつやの黒髪ストレート。

 くっきりとした二重まぶたと長い睫毛は、美人そのものだ。 

 でも笑うと、年相応のあどけない表情になる。

 鼻も口も、形の良いパーツが配置されていて、アイドル顔負けの可愛らしさだ。


 その隣のポニテ女子も……これまた負けていない。

 クリっとした大きめの猫目で、笑うとエクボが可愛らしい。

 ライトブラウンのポニーテールは、そんな活発な印象を与える彼女に似合っていた。


 俺たちはいろんな話に花を咲かせた。

 なかでも話の中心は、大学での履修内容だ。

 どういった科目があるのか。

 将来の進路は。

 彼女たちが一番興味があるトピックだった。


「って言っても、オレたちもまだ1年だからね。将来のこととかも、まだあんま具体的には考えてないけどさ」


「まあ俺もそうだな。卒業後の事とか、想像もつかない」

 誠治の言葉に、俺も同意する。


 俺は少しだけ冷静にまわりを見渡す。

 この時間のマクドは、高校生や大学生らしい若者が中心だ。

 その若者の中に、俺も含まれている。

 しかもこんなに可愛いJKと一緒だ。

 長野にいた時には、考えられないような日常だ。



「あ、あのっ!」

 突然、清楚系美少女が声を上げる。


「も、もしよかったら、Lime教えてもらえませんか?」


 そう言う美少女の横で、ポニテ女子が大きく目を見開いて驚いている。


「もちろんだよ! オレからも聞こうと思ってたとこ!」 


「誠治、お前には聞いてないと思うが」


 結局俺たち4人は、QRを読み合う。


 清楚系美少女は、南野明日菜みなみの あすなちゃん。

 ポニテ女子は、松倉まつくらエリちゃん。

 2人とも明青大付属高校の3年生。


「エリちゃんかぁ。可愛い名前だね。明日菜ちゃんも、よろしくね」

「はい、誠治さんも瑛太さんもよろしくお願いします」


 調子のいい誠治の名前呼びに、ポニテ女子はそつなく返す。


「えっと……私も、え、瑛太さんって呼んでもいいでしゅか?」

 清楚系美少女は、何故か噛んでいる。


「もちろん。よろしくね、明日菜ちゃん」


「は、はいっ!」


 明日菜ちゃんは、キラキラした満面の笑みで元気よくそう言った。

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