第13.5話 企画倒れの気配
―――――――――
(???視点)
この業界では珍しくないのかも知れない。
・・だけど、きっと誰もが受けたくない連絡を私は受けていた。
「え?番組の企画自体が無くなる、ですか?」
「そうなんです。本当に申し訳ありません!!」
電話相手は、あるテレビ番組にて、私が担当している芸能人の出演を予定していた企画担当の方だ。
出演依頼で顔を合わせた際は、初の企画担当と意気込んでいたのが印象的だった。
「・・・差し出がましいかも知れませんが、事情と経緯を教えて頂いてもよろしいですか?」
駆け出しの一マネージャーが、聞けるような内容ではないかも知れない。ただ、顔合わせの際に「駆け出し同士頑張りましょう」と言った空気だった気がしたので、失礼を承知で聞いてみた。
「・・・お恥ずかしい話なのですが、実は、」
相手の方もそう思ってくれていたのか、詳しい事情を話してくれた。
まず、番組の企画内容が「自分自身が学生時代に食べてものすごく印象深かったが今は無い料理」を探しだし、本番組でのみ復活、芸能人の方に食べてもらう」というもの。
ただ、その料理自体ほんのわずかな期間しかメニューに無く、そのお店自体も現在、閉店してしまっており、そこを探し出すドキュメントも企画の内容だという。
「え、でもそう言うのって、ネットとかで調べれば結構見つかるものじゃないんですか?」
「・・私もそう考えて企画したんですよ。実際、お店をやっていた会社はすぐに分かって、そのメニューを当時作っていた方とも連絡が取れたのですが、・・」
そこで、電話の先から大きなため息をつかれる。コラコラ。
「なんでも、「今現在、当社はフランチャイズ契約を切って、飲食事業自体からも撤退しています。なので、フランチャイズ時代のメニューを、我々が公に出すのは問題があるのです。申し訳ありませんが」と断られまして・・」
ああ・・・
「一応、同系列のフランチャイズ店にも、そのメニューは無いか聞いてみたのですが、どうやらその店のオリジナルらしくて・・」
「私の考えが甘かったかもしれません。・・ですが、まさか、幻のメニューが、本当に幻になるなんて思わなくて・・本当に申し訳ございません!!」
この方だけを責めることはできないかも知れない。ただこちらも、「仕事が一つ無くなりました」であっさり終わらせるのもどうかである。
「・・ちなみにですが、当時の店舗名をお伺いしてもよろしいですか?」
「はい。「カフェ・フレイスニール○○店」です。」
その店舗名を聞いた瞬間、私は反射的にこう言っていた。
「・・・それでしたら、私の方で何とかなるかも知れません」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます