第12.5話 彩Before

――――――――――

(とある大学にて)


「おはよ!武田さん、昨日のレポート提出できた?」


「うん、大変だったけどなんとか」


「おー、流石!ちょっと教えてもらっていい?」


「次の講義までの時間で良ければ」


「助かる―!ありがとね!」


「え?武田さん教えてくれるの!?俺も良いかな?」


「あ、じゃあ、私も―!」


「はは・・・私で良ければ」


 こうしてあっという間に、大学の空き教室に5,6人で勉強する集団が。

その臨時講師役の女学生は、流暢・・とはいかないまでも、級友それぞれが詰まっている所を、なるべく丁寧にわかりやすいよう説明して回る。


「ああ、そういうことか」


「これなら何とかできそう!」


「良かった。じゃあ、私はそろそろ次の講義に行くんで」


「あ、あの武田さん!」


最初に話しかけてきた女学生が声をかけてくる。


「えっと、その・・・お礼がしたいから、今日の講義が終わった後にでも、ちょっとだけ食事とかできないかなぁ~って」


突然の誘いに戸惑うと、申し訳なさそうに、


「・・・すいません。今日は講義の後すぐバイトがあるので」


「あ、そなんだ。うん、忙しいのにごめんね」


互いに申し訳なさそうに謝り、別れる。




「・・・あ~、今日も武田さん誘えなかった~」


「あ、やっぱりそゆこと?」


「・・いや、普通に昨日のレポート教えて欲しかったのもあるけど、出来ればもっと話してみたいんだよね」


「うんうん、わかる」


聞いてもいないのにコクコクとうなづく男性陣。


「武田さん、可愛いし、真面目で頭も良いし人当たりもいいから、親しくなりたい輩は多い気配」


「同じ女性から見てもそうだよ。まぁ、「あんな子と親しければ得」みたいな損得勘定も少しあるのは否定しないけど、それ抜きでも友達になりたいもん」


「高嶺の花って雰囲気とは違うけど、何か壁?隠しごと?してるみたいに思えるのよね」


「「確かにそれは感じる」」


異口同音に学生らは、「武田彩」という級友をそう言ったように感じていた・・・




「え、PV解禁ですか!?」



・・・そこに、一つの転機が訪れようとしていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る