第9.5話 招待

――――――――――

<三橋視点>


 会議が終わり、会議中は切っていたスマホの電源を入れて確認する。


「おや?珍しいな」


普段それほど連絡のない人物から着信が来ていたので、折り返し電話を掛ける。


「もしもし。珍しいな?」


「至おじさん、こんにちは。お忙しい所すみません。今いいですか?」


「ああ、会議が終わって、少し空いたところだよ。どうした?」


「まずは・・・先日の件の御礼まだ言ってなかったので。ありがとうございました!」


先日?ああ、あのことか。


「気にするな。俺は彼を紹介しただけで、特に何もしていないからな。」


「いえそんな!お陰でどうにかクランクアップまでいけました。感謝しています」


「ああ、ニュース観たよ。お疲れさん。おめでとうな。」


「ありがとうございます。・・・それでですね、もう一個の要件と言うのが、今度ある映画の完成披露試写会に、おじさんと・・あの時お世話になったお二方も招待したいと思っているのですが、連絡先を知らなくて・・・」


二人?ああ、陣内医師と瀬崎君か。


「わかった。彼らには俺から伝えておく。俺含めて時間がとれるかはわからないが、招待状も送っておいてくれ」


「ありがとうございます!お忙しいのにすみません」


「なぁに、可愛い姪の頼みだ。これくらいならいつでも聞くから、気軽に連絡おくれな」


「ありがとうございます。それじゃあ、すぐに送りますね。失礼します」


「ああ」


電話を切る。


「俺だけじゃなく、一度だけ会った人たちも気遣えるとは。あの子も成長したなぁ」



 姉の娘であり自身の姪に当たる「皆瀬 瑠衣」とは、彼女の幼少期にたびたび遊び相手になったくらい。大人になった彼女とはあまり会えていない。

・・・だから、三橋が彼女の今回の行為を「気遣い」と思っても、それは仕方ないことかも知れない。

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