第8.5話 プログラム終了のお知らせ?

「三橋さん・・・三橋専務から聞きましたよ」


恒例となっている2週間に一度の経過報告。

挨拶もそこそこな開口一番、緒方医師を問い詰める。


「ほう、何をでしょう?」


白を切るつもりだろうか。俺は三橋さんから聞いたことを、簡潔に告げた。その上で、


「緒方さん。・・・あなたが私をどう思っているかはわかりませんが、私はあなたのことを嫌いではないし、騙しているとも思ってません」


「ただ、「今回の一件」の真意をそろそろ教えて欲しいだけです」


俺はめったにしない真剣な表情で、緒方氏を見る。その雰囲気を感じてくれたのか、真剣な表情で答えてくれる。


「・・・おっしゃるとおり、瀬崎さんへの「健康診断結果」には、「ある人物」からの働き掛けも関与しています」


「ですが流石に、正式名称「内面性顔面悪性傾向化症候群」。いわゆる不細工になっていく症状自体は、でっち上げとかではありません。」


え?俺、ホントに今より不細工になるの??


「・・・ただ、この症状が起こりやすい人のデータは、まだ確立されていません。つまり、瀬崎さんは全くならないかも知れないし、逆に私含め誰もがなる可能性もある。その上で、瀬崎さんに通知したのは偶然ではないと認めます」


要するに「不細工になり得る症状」で診断を受ける患者さんは存在しておかしくはないが、それが俺である明確な根拠はないと言う事か。

それなら、俺が最初にここで受付をした人たちの反応も納得できる。だが、ここでさらに重要なのは、


「それで、・・・「ある人物」とはどちらなのでしょう?」


「その事なのですが、瀬崎さん。・・・先の「改善プログラム」で受けた「モデル体験」では活躍されたみたいですね」


その言葉に俺はたじろぐ。


「いやいや、「当初の想定よりも良いPVができそうだ」と三橋さんから伺ってますよ。大変良い事です」


「でも、瀬崎さん。あなた自身は、・・・「モデル体験のプログラム」終わって無いですよね?」


「・・・やっぱり、そうなりますよね」


自分より華も熱意もあった武田さんにモデルをお願いしたのは、我ながら良い判断だったと思う。実際、結果も出せたと見てよいだろう。

とは言え、顔に自信のない30代おっさんの俺が、「新製品のPV」に出たくなかったのもまた否定できない。


緒方氏は「わかりますよ」と言った表情で告げてくれる。


「結果は出せてるようですし、瀬崎さんはビジネスマンとして良い判断をしたのだろうと思ってます。が、担当医師としては「褒めて終わり」とはいかないのもわかって頂けると思います」


そう言われると反論できない~~


「とは言え、今から「モデル」かそれに準ずるプログラムができる当てが都合よくあるもないので、いったん保留という形になりますが、よろしいでしょうか?」


「乗り掛かった船・・・では無いですけど、もうここまで来たら黒幕まで知りたいので、すみませんがそれでお願いします」


「わかりました。追試、・・・この場合「追プログラム」ですか?が、決まり次第ご連絡を差し上げますね」


それまでは普段通りの生活で大丈夫です。と言われ、診察を終える。


・・・まぁ、これまでも普段通りやってるんですけどね?



こうして俺の延長戦「アディショナルバトル」?と呼ぶべきものが決定した。

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