若く優秀なふたりの仙士、楊蓮鋒とその弟弟子・桃修苑が、不可解な事件の真相を追うお話。
ゴリゴリの中華ファンタジーです。舞台設定というか、もうどっぷり浸れるこの空気感がすごい!
漢字が多めで耳慣れない用語もモリモリ出てくるのに、でもなんとなく想像できちゃうしすいすい読める。作品全体に通底するシンプルなわかりやすさと、そして細やかで自然な世界観の演出。この「作品世界にスルッと乗っていける感じ」が実に巧妙でした。気づけばすっかり取り込まれているような感覚。
キャラクター、というか、主人公のふたりが好きです。露骨なキャラ付けみたいなものがない、ばかりか性格や外見の直接的な描写さえもが少なく、にも関わらずその振る舞いから伝わってくる、この人物造形の手触りたるや!
人間の自然な魅力というか、ふわりと漂うような色香があって、それがもう本当にたまりません。ふたりの関係性というか、この絶妙な距離感が好き。これこそ言葉や単純な設定ではなく、まさに物語でなければ表せないもの。
わかりやすさというか、物語を受け止めるのに余計なエネルギーを使わせない、自然な筆致が嬉しい作品でした。