第2話 過去と能力

「ここは...?」


目を開けてみると、そこは研究室だった。

しかし、紗奈博士が居たような古びた研究室ではなく、全ての最新機器が揃った真新しい研究室だった。


「あなたは誰?

さっきまでこの研究室には居なかったよね?

返答次第ではあなたを拘束するよ。」


周りを見回していたらいつの間にか後ろで銃を突きつけられていた。

これはまずい。

このままじゃ僕は不法侵入したヤバいやつだ。

でも、「未来から来ました!」なんてバカ正直に言ったら打たれるに決まってる!

しょうがない、ここは嘘をつくしか...


「ち、違うんです!

僕はここの研究員ですよ!」


「研究員?ここは私の研究室だ。

私と私の許可した研究員しか入ることは出来ないよ。

本当の事を言ってくれ。」


しまった!完全に間違った。

言い訳はもう多分通じない...

もう本当のことを言うしかない!


「わかりました、本当のことを言います。

でもそんな銃を向けられていたら喋りたくても喋れないです。

その銃をおろしてくれませんか。」


「君、武器は持ってないよね。」


「もちろんですよ!」


「分かった、でもなにか怪しい行動をとった瞬間に打つからね。」


そう言う銃を構えていた腕がおりた。


「ここに座ってくれ、取り敢えず座って話しをしよう。」


そして、ふと銃を向けていた研究員の顔を見ると...


「...紗奈..博士...?」


間違いなく紗奈博士だった、見た目は10歳ぐらい若く見えたが、確実に僕が今まで一緒にいた紗奈博士だった。


「ん、なんか言ったかい?」


「い、いえ何も言ってないです!」


あっぶねええここで名前とか言ったら、なんで知っているんだ、とかさらに怪しまれるところだった。


「さて、じゃあ聞かせてもらおうか。」


「分かりました...単刀直入に言います。

僕は未来から来ましたっ!」


「はい?」


そりゃあそういう反応になりますよね。


「未来から来ただと?

そんな馬鹿な話あるか。

もしもその話が本当だったとしても、一体誰が作ったって言うんだ。」


「えっと...それは...」


言ってしまっていいのだろうか。

本人に。


「やはり作り話か。

そんな装置、私だって何年も研究していたが作れるはずがないんだよ...」


「そんなはずないです!」


「君に何がわかるんだ。」


「その装置を作ったのは...

貴女です...」


「何だって?!

この私が作った?!」


くそっこの際全部話そう...


「貴女は10年前偶然作れたと言っていました。

でも、それ以上は何も聞いていないです。

どうやって作ったのかも。」


「わかった、教えてくれてありがとう。

だが、すまない。」


その時、後ろにあったドアが開いた。

その瞬間体に電流が走った。


「な、なんで...」


「最初から君が来た時点で警備員に伝えていたんだ。

だが、君が言っていたことを一旦信じよう、興味深い話だからね。」


「そんな...ことって...」


気が遠くなっていく.............


「警備員たち、さすがにちょっとやり過ぎなんじゃないかな。

多分まだ10代の子供だぞ。」


「すいません、しかし一体どこから入ったのでしょうか。」


「警備員の君達に伝える必要は無いだろう。

取り敢えず、この子にはちょっとした実験台になってもらう。

第2研究室に運んでくれないか。」


「わかりました。」



.......紗奈博士と僕が出会ったのは、僕がまだ10歳の頃だった。

僕の両親は離婚し、母の元にいたがその後すぐに蒸発した。

そして僕は親の抱えていた借金を全て請け負うことになり、闇金に追われ夜逃げをした。

そして僕が雨が降る中、路地の中でうずくまっているところを紗奈博士に拾ってもらった。

その後は紗奈博士の研究室で助手として一緒に過ごすことになった。

あの時は、本当に幸せだったんだ。

本当に。

なんでこんなことになってしまったんだろう。

平和な世界にしたいよ...


「...ここは、あのソファか。

いつまで寝てたんだ...」


「起きたかい。」


「は、はい...」


また警備員とか来ないよな...


「はははっ、そんなに身構えないでくれ。

もう警備員もいない。

ほら、コーヒーだ、目が覚めるよ。

大丈夫、何も入れちゃいないさ。」


「ありがとうございます...」


「そういえば、君の名前は?

私は初対面なのでね、教えてくれると嬉しいよ。」


「そうですね、僕の名前は齋藤颯太です。」


「齋藤颯太君か、私の名前は...もう知ってるかもしれないが、柚咲紗奈だ。

よろしくな。」


苗字柚咲だったんだ...今まで紗奈博士としか読んだことがなかった。


「あー...颯太くんと呼ばしてもらうよ。

颯太くん、すまないが君が寝ている間に体をちょっといじったんだよ。」


「え、いじったってどういう意味ですか。」


「君に能力を与えた。

と言えばいいかな。」


「能力を与えた...?」


「ああ、君の体に注射を打ち、体内の第六感を覚醒させる。

ということを行ったんだ。

まだ試作品だったがね。」


「試作品って...人が寝てる間にそんなことして僕が死んだらどうするんですか...」


「ああ、確かにその危険性も10パーセントぐらいはあったかな。

しかし、君は素質がある。

副作用も、拒否反応も無く君の体は順応した。」


え、10パーセントはあったの?

まあいいか....紗奈博士は大体そんな感じで上手くいくことが多いからな...


「で、君の能力についてだが。

よく分からなかった。」


「はい?

よく分からない?」


「ああ、どんな力が使えるのか、どういう効果があるのかもね。」


「ええ...まあ調べようがないですもんね。」

一瞬の静寂の後僕はコーヒーを飲む。

よし、話が一段落着いたところだし、過去に来た目的を言うか...


「それじゃあ、僕が過去に来た目的を話してもいいですか。」


「そういえば確かに聞いていなかったね。

話してくれ。」


「僕が過去に来た理由は、今から10年後世界が、この星が崩壊するからです。」


「崩壊だって?」


「はい、ある時この星に突如異常生物や現象が出現し、それらによって崩壊することになります。

そして、その原因は全てこの星に元からあったと、紗奈博士は言っていました。」


「やはり、か。

私の推測は合っていたんだな...」


そう呟くと紗奈博士は目の前にあったコーヒーを全て飲み干した。


「そうだ、それらは全てこの星にいるよ。

だから私は君に能力を与えた。

それら異常なものに対抗出来る力をね。

ただ今まで実験体がいなくてね、このままだと私の計画と研究は全て無駄になるところだったんだよ。」


もしかして...だからあの時、私の研究は意味をなさなかった。

と言ってたのか。


「これで私は異常対抗チームを立ち上げる事が出来る。」


「はい!

僕もできる限り頑張ります!

それが未来のあなたとの約束なので!」


「そうと決まればまずは研究所の所長のところに行こう。

研究成功とチーム結成の許可を取りに行くぞ。」


「はい!」


所長ってどんな人なのだろうか...

僕が未来にいた頃は、所長に会いに行くことなんて1度もなかったからな...

多分それも、あの時の紗奈博士の研究が成功していなかったからなんだろう。

楽しみだ。



















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滅びゆく世界の最後の希望となった青年は、手に入れた能力を使って世界を修復する。 海の音 @umi_ne

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