滅びゆく世界の最後の希望となった青年は、手に入れた能力を使って世界を修復する。
海の音
第1話 崩壊
「第3区画の皆さんは直ちに警備隊の指示に従って避難船へと移動を開始してください。
現在、第3区画の中央広場にて、超高エネルギーホールが出現しました。
このホールからは多数の異常生物が出てくると考えられており、その異常生物は強大な力を持っているものと思われます。
警備隊の部隊が対応していますが、時間の問題であろうと思われます。
繰り返しお伝え致します。
第3区画の...みな..さ..警備た...」
テレビが止まった。
ここは第4区画、第3区画から異常生物が来るのも時間の問題だろう。
もう第1、第2区画はほぼ消し飛んだ。
僕達も、もう終わりかもしれない。
「私の研究も意味を成さなかったなあ...」
と研究室の壁に寄りかかっていた紗奈博士は嘆いた。
「そんな事ないですよ、しっかり第1区画の異常生物はその研究室で出来た銃で倒すことが出来たじゃないですか。」
「倒したところで、結局奴は自爆して第1区画と第2区画丸々吹き飛ばしちまったじゃないか、颯太君も見ただろう。
倒せたって住民を守れなきゃ意味が無いんだよ...」
「で、でも...!」
「いいんだ、同情なんて要らないのさ。」
その時、テレビの電波が戻ってきたようだ。
「ただいま電波が復旧したようなのでお伝えします。
現在入ってきた情報によりますと、えー...
避難船が異常生物により破壊された模様です...
....我々はどうすれば良いのでしょうか...」
そうテレビキャスターが言った瞬間に爆発音が鳴りテレビは砂嵐となった。
「もう終わりなんですかね、僕達。」
紗奈博士は沈黙している。
何か考え事をしているようだ。
「こんな時に何考えたって無駄ですよ!
もう、この星と共に死ぬしかないんです...!」
「そうだ...」
と紗奈博士は呟くと、おもむろに研究室の薬品が置かれている棚に歩いていった。
「なんですか、服毒自殺でもするつもりですか。
それでもいいかもしれないですね。」
「そんなことはしない、まだアレがある。」
紗奈博士は棚の裏に手をやった。
すると、カチッという音が鳴り棚が横に移動した。
そこには壁に窪みがあり、その中に埃まみれの小包が入っていた。
その小包の中には複雑そうな機械が入っていた。
「なんですか、それ。」
「これはね、時間逆行装置だよ。
その名の通り、時間を巻き戻し、過去に戻ることが出来る。」
「そんなものいつ作ったんですか?!」
「10年ぐらい前だったか、偶然作ることが出来たんだよ。」
「偶然って...んな馬鹿な...
でも、それでどうするんですか。」
「過去に戻って、先に元凶を叩くんだ。」
「元凶って言ったって、どこから現れたかも分からないんですよ?」
「それは見当がついているんだ、これらの異常生物や現象は、全て元からこの星に存在していたものだ。
そして、この星にいたその異常なモノ達が暴走した結果が今の状況と思われる。」
「つまり、その暴走する前の異常な奴らを倒せば良いんですね。」
「そうだ、だがそいつらの数は約300近く居る。」
「300...でもこの星を救うにはやるしかないですね。
早速行きましょう!」
「ああ、ただこの時間逆行装置は完全に完成してはいない。
この装置は手に持った1人しか使うことは出来ないんだ 。」
「そんな...だったら、紗奈博士が使ってください!
博士は過去に行っても絶対大丈夫です。
頭も良いし、どんなものでも作る事ができるじゃないですか。」
「しかし...君を置いて行きたくは...」
そう紗奈博士が言った瞬間、爆発音が天井から鳴り響いた。
この部屋は15階建ての最上階の部屋のはずだ。
高さだと大体45mぐらいだったはず...
まさかそんなにでかいのが居るのか...!
そう思っていると上から瓦礫が降ってきた。
「危ない!」
そう言い博士が僕を突き飛ばした。
「危ないじゃないか、危うく君は死んでしまうところだったんだよ。」
「さ、紗奈博士...!
その足!」
紗奈博士は大きな瓦礫の下敷きになり、血が瓦礫の下から流れ出てきていた。
「私は大丈夫だ、しかし、もうこれで私が時間逆行装置を使うことは出来なくなってしまったね。」
「そんな...!
僕が瓦礫を持ち上げます!
そしたら足を引き出してください!」
しかし、いくら力を入れて持ち上げてもビクともしない。
「くそっ!
なんで...なんで...!」
「もうよしてくれ、この大きさの瓦礫は持ち上げられないよ。
それにこの出血量じゃちょっとキツイかな...」
「嫌ですよ、そんなの...」
「ごねごね言うんじゃないぞ!
君しかできないんだ!私が過去にいったところで、怪我は治らない。
ただ君をこの時代に置いていってのたれ死ぬだけなんだ!」
初めて紗奈博士に怒られた。
いつも絶対に怒らなかった紗奈博士が怒った。
初めて怒られて、冷静になれた気がする。
そうか、ここで僕が過去に戻ればこの未来は無くなって、紗奈博士の怪我もこの星の崩壊もなかったことになるんだ。
「わかりました...やります。」
「そうか、そう言ってくれて嬉しいよ。
じゃあ、これを君に渡す。」
そう言われ差し出された装置を受け取った。
その瞬間、建物そのものが傾き始めた。
「この建物も崩れ始めたようだね。
さあ、早くそれを作動させてくれ。」
「わかりました...
博士。」
「なんだい。」
「僕、博士のことが好きでした。
たとえ15歳も歳が離れていても。」
「そうか、ありがとう。
私も君のことが好きだったよ。
だから次は、近い歳になってまた会おう。」
「はい。
必ず...!」
そして僕は装置を起動させた。
僕の目の前の景色が段々と前の方に遠のいていく。
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