初カレ

2年ぶりのクラス会。

幹事には、ちゃんと確認しといたのに。

(なんでアイツがいるのよー!)

そう、思ったとたん。

目が、合ってしまった。

「よっ。」

元カレの、タクトと。


「おめー・・・・」

眩しそうに目を細めて、タクトが私を見る。

(もしかして・・・・この流れって)

いい女になったな、とか言われちゃうかも?!

なんて思ってた私に。

「相変わらず、色気無ぇな。」

そう言って、タクトはケラケラと笑った。

そうだった。

こいつは、こんな奴だった。

だから、別れたんだった。

(少しでも期待した私がアホだった。)

笑い続けるタクトの横を素通りして、壁際に置かれた飲み物を取る。

と。

同時に伸ばされた手に、触れた。

「あっ。」

そこにいたのは、タクトと付き合う前に、私が片想いをしていたアキラ君。

なにこの、少女マンガみたいな展開。

「ユウカ、だよな?」

「うん。久しぶり。」

「一瞬、誰かと思ったよ。綺麗になったな。」

ほんと、なにこの少女マンガな展開。

そう思いつつも、全然変わらない爽やかな笑顔のアキラ君に、キュンキュンして顔が赤くなっちゃったりして。

「やだもう、アキラ君ったら・・・・ギャッ!」

言い終わらない内に腕を強く引っ張られ、体勢を崩した私は誰かの胸に抱きとめられた。

「おめぇ、誰彼構わず口説くの、いい加減やめろ。」

頭の上から聞こえてきたのは、タクトの声。

「ユウカは俺の女だ。」

そのまま、引きずられるような形で、会場から連れ出される。

「ちょっとっ!何すんっ・・・・」

やっとタクトの腕から解放されて、文句のひとつも言ってやろうと思ったのに。

久しぶりの、びっくりするくらい優しいタクトのキスに、すっかり毒気を抜かれてしまった。

「あんな奴に色目なんか使うんじゃねぇよ。」

そう言って、そっぽを向くタクトの顔が少しだけ赤く見えるのは、私の気のせい?

「あれ~?私には色気が無いんじゃないの?」

「・・・・それでいいんだよ、おめーはっ。」

怒ったような顔で、さらに顔を赤くして、タクトがボソリと呟く。

「それでも、好きなんだ。」

キューッと。

もう、心臓ワシ掴まれちゃった感じ。

キュンキュンどころじゃない。

キュンキュンの、最上級!

そうだ。

そうだった。

こいつは、こんな奴だった。

だから、私は・・・・

「オレ、別れたつもりなんて無ぇからな。勝手に元カレ扱いすんな。」

やっと私の方を向いて、タクトが言った。

「抜けるぞ。」

私の返事も聞かずに、強引に手を取って歩き出す。

会場入口近くで、幹事がニヤニヤしているのが見えた。

そっか。

私、『元カレ、来る?』って聞いたんだ、幹事に。

そりゃ、来ないって言うよね。

元カレなんて、いないもん。

タクトが私の、初めてのカレなんだから。

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