2 第一章  青色の子猫 君と見る世界のすべては青色だった。

 第一章


 青色の子猫


 君と見る世界のすべては青色だった。


 青色の夏の日に僕は君と出会った。

 真っ白な冬の日に、私は君にさよならを言った。


 ……助けて。誰かの声が聞こえる。とても小さな声。……たぶん、とても小さな子供の声だ。

 大友幸はその声を聞いて目を覚ました。

 幸は、泣いていた。理由はよくわからなかったけど、だけど涙は自然と溢れていた。……止めどなく、流れていた。

 青色のカーテンの隙間からは朝の眩しい太陽の光が薄暗い幸の部屋の中に差し込んでいた。

 音は時計の針の動く音だけだった。

 それはいつも通りのとても静かな朝だった。

 幸はベットから這い出ると、真っ白なパジャマのまま、自分の部屋を出て、誰もいない一階のキッチンに向かった。

 そこであったかいコーヒーを飲んでから、幸は洗面台の前まで移動をしてそこで顔を洗ってから、歯を磨いた。

 お風呂場でシャワーを浴びたあとにキッチンに戻ると、目玉焼きとトーストを焼いただけの簡単な朝食の準備をした。それを食べてから、幸は部屋に戻ると、高校の制服に着替えをして、学校のカバンに荷物を詰め込んで、高校に登校する準備を整えた。

「行ってきます」

 と玄関で小さな声でそう言ってから、幸は家のドアを閉めて、もうあんまり登下校の道も覚えていないくらいの、久しぶりの高校に向かった。

 駅に向かう途中の道で、幸は一匹の猫とすれ違った。

 とても弱っている、小さな子猫だった。

 小さな子猫は幸を見て、まるで餌をねだるようにして、……助けて、と幸に訴えかけるような目をして、幸のことをじっと見つめていた。

 幸はそんな小さな子猫を見て、君のことを思い出した。

 君と過ごした嵐のような六ヶ月間は、絶対に一生、忘れることもできないような、そんな今でもずっと幸の心の中心にある、本当に毎日が楽しくて、毎日がずっと日曜日のような、そんな本当にあっという間の、……六ヶ月間だった。 

 ……『ずっと止まっていた僕の時間を動かしてくれたのは、君だった』。(そんなことを幸は思った)

 幸はその小さな子猫を拾った。

「にゃー」と幸の腕の中で子猫は鳴いた。

「よしよし。もう大丈夫だよ」にっこりと笑って、幸は鳴いている小さな子猫にそう言った。

 すると子猫は安心したように鳴きやんだ。

 子猫は幸の腕の中で目をつぶった。

 そしてそのまま、幸の腕の中で静かな眠りについてしまった。

 

 幸は交番に行って、事情を話してお巡りさんに子猫を手渡した。子猫を受け取ったお巡りさん(優しい顔をした白髪頭の年配の人だった。少し話をすると、どうやらもうすぐ定年でお巡りさんをやめるらしい)は幸に「君は優しいね。こんなことできる人はなかなかいないよ」と悲しそうな顔で笑ってそう言った。

 幸はなにも言わなかった。

 簡単な書類を書いてから、幸は交番をあとにした。

『君は優しい人だね』

 と、君が笑って言ってくれたことを、幸は心の中で思い出した。

 君の言葉に幸は『僕は全然優しくないよ』と答えた。

 そんなことを思い出して、幸はまた、一人で泣きそうになった。

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