武器交換

 騒々しい音が深夜だというのに止まることなくしている。隣近所に住民でもいたら騒音で苦情が来るところだが、この辺に人はおらず苦情が来ることはない。まあ、そういうところだから変な組織のアジトが作られてしまうわけなのだが……

 にしてもうるさいなとその騒音の原因である一つ、銃を打ち鳴らしながら太宰はぼんやりと思っていた。集中力が切れてる自覚はある。やたらと多い敵の数。半分潰したとは思うが、まだまだ半分といったところなのかうじゃうじゃうじゃうじゃ湧いてくる。しかも面倒なことに一人一人がそれなりに強い。マフィアで言う所の中堅レベルはあるだろうか。まあそれでもなんとかぎりぎり対処できる事態ではあるものの疲労で思考がぶれ始める。

 銃をぶっ放し敵の足や肩に貫通させながら、視界の中には福沢の姿をおさめていた。すでに疲れが見え始めている太宰と違い、刀をふるい敵を次々斬り落としていく福沢はまだ暫く余裕がありそうだ。そろそろ一旦撤退して何処かで一呼吸落ち着けた方が良いかと考え、太宰は実行に移した。銃を二発撃つ。そうしながら確保しておいた逃げ道へ駆け込んでさらにもう一つ撃つ。仕掛けておいた仕掛けが作動して近くにいた敵が混乱する。姿を晦まそうとした大宰は、その時、人混みの奥から駆け寄ってくる気配に気付いて立ち止まっていた。

 端整な顔立ちが歪む。小さく出ていく舌打ち。数秒後には太宰がいた場所を刀が通り過ぎていく。何とかかわしたものの体制が崩れる。二撃目が来る。銃で抑えようと試みるが鋭い攻撃の威力はかき消しきれなくて手から弾き飛ばされていく。さらに崩れる体制。膝がつく。次の攻撃をかわしきるのは不可能に近い。大きく振りかぶる敵を見据えた後、大宰は地面の上に視線をはわした。混乱させた男達や少し離れた場所にいた男達もだいぶ近付いてきていた。

 鈍い声が上がる。どっしゃりと音がして後数センチで届きそうだった刃は人ごと地面に叩きつけられる。太宰の目がそれを見て手が伸びる。太宰と福沢の声が聞こえたのはその時で、咄嗟にそちらを見て飛んできたものを掴んでいた。掴み直し、邪魔な鞘を乱雑な仕草で放り投げる。崩れ、地面に膝をついた体制ではあったが体をひねり近づいていた男たちを斬りつけていた。

「それを使え」 

「ありがとうございます。でも社長は」

 素早く体制を立て直してもう一人二人と切り倒す。なるべく足か肩を狙っているつもりだが少しだけずれる。眉を寄せつつ福沢を視界にいれる。福沢に飛びかかる男たち。上がる銃声に悲鳴。

「案ずるな。これを借りる」

「了解しました」

 襲ってきた男の肩に刃が突き刺さる。抜きながらとは言えと太宰は福沢と話していた声とは違う小さな声で呟き己が倒した数名をみ、周りのまだ動いている敵を見ていた。

「私刀は普段使わない分加減がわからないのだよね。急所は外せると思うけど峰打ちしてあげられるほどではないからそこを把握して襲ってきてくれたまえよ」




何とか整った呼吸。ふぅと深く息を吸い込んだあと太宰はその体を横に倒していた。地面であるなんてことは気にしない。まだ息をしている怪我人共が倒れていて血塗れであることにも頓着はしなかった。ほうともう一度息を吐きだしながら社長と福沢を呼んで、振り返ったのを確認してから手にしていた刀を放り投げていた。どこにいったかわからなくなった鞘にはいれられなかったもののなんなく福沢は受け止めてざっと刀身を確認するとぽいとその辺に投げ捨てていた。大丈夫かと福沢がとう

「動く気は全くありませんが、怪我はかすり傷程度ですよ。まずいのは倒れている奴らの方ですよ。手加減なんてできませんでしたからね」

「元々こやつらが悪いのだから問題はない。死んでる者さえいなければ今回は大丈夫だ。見る限りはいないな」

「それは良かった。ある程度は社長に剣術を教わっていて正解でしたよ」

 じゃないと殺してしまうところでしたよなんて口にする太宰。その言葉を聞きながら福沢は足で男たちの一人を仰向けに転がしていた。懐に手を入れてUSBメモリを回収する。

「そうか。やはりいざというときのことも考え敵の武器や味方の武器は使えるようにしておいたほうがいいな。今一度技術指導の時間を設けるか。

 それより見つけたぞ」

「ありがとうございます。うふふ。さあ、どんなお宝情報が入っているのかな。まあ大体予想はできちゃうわけですが、ここからあの男から盗まれた情報は見ないようにして他の所の情報は全部頂いてしまいましょうか」

 放り投げるメモリ。受け取った太宰はにこにこと笑う。それでも動く気のない太宰にさてと福沢は声をかけていた。太宰のもとまで行き手を差し出す。

「軍に連絡を入れたら帰るがお前の家と私の家どちらがいい」

「んーー、社長の家ですかね。お腹がすいてます」

「そうか。牛鍋を作ってきている。少し休んだら食べて寝よう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る