第3話

「ねぇ?大丈夫なの?」


 僕にそう話しかけてきているのはクラスの委員長である篠原だ。召喚されてからおそらく3日くらいだ。牢獄は窓すらなく身動きも取れないので時間経過が感じにくい。

 

「ぼちぼちかな?んでそっちはどんな状況なの?」

「思ったより余裕なのね。ここ牢屋でしょ?」


 ははっと軽く笑った僕を遠目に見た篠原は自分たちの近況を話し始めた。転移してきたのは僕とクラスメイト達の30人を含めて50人という事らしい。全員が船に乗っていたという事はなく他の人達はそれぞれ他の場所で死んだ人間の様だ。そして軍事訓練に参加したものは資金が与えられる制度を作られ、この国のお金を持っていない地球人達はほぼ強制的に兵士としての訓練を開始されたらしい。

 だがそれも2日で自由参加レベルになったらしい。なぜなら超ド級のチート能力を持った人間が出てきたからなのだ。それはクラスメイトの金剛 猛という男だ。ちなみに強そうな名前をしているが僕と同じオタク枠でクラスでは隅で地味に過ごしていた様な奴だ。

 

「へぇーー猛どんな能力だったの?」

「えっとね?死の宣告って言ってたよ?どんな相手でもその魔法で倒せるのだって?もう勇者ってもてはやされてるよ。」

「うわっえげつないスキルだな。でもさ?その魔王が即死耐性無いってなんでわかるの?」

「んとね?特殊スキルは基本的に防げないらしいよ?」

「ってことは猛に逆らったら死ぬの確定なのかwそれ怖いな・・・。」

「一応クールタイムが3日らしいからおいそれと殺せないらしいけどね。それに一応お城では殺人罪が適用されるらしいよ。今はダンジョンって所でレベル上げるために訓練してるよ。魔王と倒せたらこの国の貴族として取り入れてもらえるって聞いてすごく頑張ってるみたい。」

「ふーん。篠原はどんなスキルだったの?」

「私?見てて」


 篠原は何もない空間でキーボードを操作するような動作をすると「いくよ!」と言った。すると彼女の周りに金色に光る霧みたいなものが発せられてそれが僕のほうまで届いた・・・。

 あぁーー癒される・・・・。なんだこれすごく気持ち良いしなんだかここが牢屋だなんて思えないほどの気分になった。

 

「どう?私の天使の息吹」

「マジで?これヤバイ!!回復効果なの?」

「この靄みたいのに触れていると回復するのだって、それとアンデットにはダメージがあるんだって!」

「すごいじゃん!」

「うん。でもね。これ生き物なら敵でも回復するから戦場ではあまり役に立たないって言われたよ。笑えるよね。」

「んじゃあもう兵士にならなくてすんだの?」

「私はね?この世界って地球に比べたら全体的に学力が低いみたいだから私は貴族の方達に勉強を教える教師になるみたい・・・。」

「勇者とか兵士にならなくていいと思ったら就職かよ!いやだなー。」

「ふふ、私は元々教育関係に就職したかったし許せる範囲かな?金剛君が居なかったらそうはならなかったかもしれないけどね。あと根津君たちはもうお城を出たよ。」


 根津一味はクラスの不良達だ。彼らはアイテムボックスという能力を授かった一緒に転移してきたほかの人を連れてお城を出たという事だ。きっとアイテムボックスで万引きとかそんな感じだろう?


「でもさぁ?ここでてくらせるのかな?」

「出て行く人は止めないし、それなりに費用も出してくれるみたいだよ。でもね戦力になりそうな人は結構高額の給料で兵士として雇てもらえるみたいで大体の人は残ってるよ。一応お城出ても職安みたいなところで仕事を斡旋してもらえるから問題ないってザイールさんが言ってた。」

「冒険者ギルドかな?」

「そそ。それね。所で木村君はどんな能力だったの?」

「・・・バーサーカー?」


 そう。僕はドラ〇エでは普通に敵として出てくるバーサーカーなのだ。もう普通に魔物といってもいいだろう。なんせ今既に牢獄で鎖につながれていて身動き1つ取れないのだから・・・。

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