第12話 勇者VS
魔王城前 『ジーク』
魔王城を背景にして、何やってんだろうね。
攻撃魔術がさく裂し、飛び道具が戦う状況の中、俺達は勇者と戦っていた。
でも、
戦いはずっと俺達のターンだった。
「こんなっ、馬鹿な! なぜおまえらの方が強いんだ!」
あれ、勇者ってこんなに弱かったんだっけ。
パーティーの仲間が魔法使ったら、演技かっていうくらい勇者のやつが盛大に吹っ飛んだ。
みるみる青ざめていく勇者は、信じられないと言った顔でこちらを見てくる。
「俺はお前達の活躍の話なんて聞いてないぞ」
そりゃー、だってね。別に目立ちたいわけじゃないし。
他に勇者がいるんだから。
俺TUEEEアピールする理由ないじゃん。
「くっ、こんな事してただで済むと思っているのか!?」
ボロボロになった勇者がなんか言ってる。
ただですむんじゃないの?
魔王倒せば。
こんな人格的に問題のある勇者を選ぶくらいなんだから、国も腐ってるんだろうし。
原作でもそうだったよな。
皆けっこう腹黒。
主人公が、頑張ったから勇者達だけは良い奴になったけど。
あ、罪悪感が湧いてきた。
「哀れむような目を向けるなぁ!」
しかし逆効果だったようだ。
きれた勇者がこちらに向かってきた。
いや、ほんとごめんってその件は!
でも俺のせいだけじゃないんだから、そんな血走った目で見ないで!
すると、シャノンちゃんが俺をかばうような立ち位置で前に出た。
あれ?
それ、男女の役目逆転してない?
「お前らがいなければ、栄光は俺達のもんだったのに!」
「ごめんなさい。私がもっと強ければ、今とは違う風景があったのかもしれません。貴方達の行いをいさめる事ができたかもしれません。でもこうなった以上は」
とどめはシャノンちゃんの拳だった。
顔面にささった、重い一撃だったね。
誰の顔にささったのかは、言わんけど。
「ジークさん達のために勝たせていただきます」
「俺がお前に負ける、だと。ばか、な……」
あいつら、シャノンちゃんが剛力のスキルをゲットした事知らなかったんだな。
そんな連中が魔王倒しに行くつもりだったって、大丈夫かよ。
逆に一周回って、心配になってくるわ。
可哀そうだから、装備やアイテムはそのままにしておいていこう。
そこまでしなくても、まあたぶん魔王には勝てると思うし?
「ジークさんは優しいですね」
いや、そんな事ないよ?
「私は弱いです」
いやいや、そんな事ないでしょ。
「出来る事ならみんなを助けたかった」
俺達はともかく、君はやっぱりすごく強いよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます