第8話 はげまし



 宿屋の屋上 『ジーク』


 俺は、落ち込んでるシャノンちゃんを元気づける事にした。


 やっぱり、元仲間から疑われた事、けっこうショックだったんだろうな。


 宿をとって、皆と解散した夜。


 誰でも自由に出入りできる屋上で、ぼうっとしているシャノンちゃんを見つけ、声をかけた。


「勇者様の手助けになればと頑張ってきたんです。でもそれは無意味だったんでしょうか」


 シャノンちゃんは肩を落としてしょんぼり。


 こんなかわいい子を悲しませるなんて、まったくあの勇者の野郎は。

 攻略対象と言えども許せん。


「無意味なわけがない。シャノンちゃんはこれまで精一杯やってきたじゃないか。その努力はきっと報われるさ」


 俺は必死に頭を回転させて、可愛い女の子をなぐさめるかっこいい男を演じて見せた。


 普通だったら、こんなセリフ言えねぇよ、はずかしいっ。


「悔しいなら見返してやろう。悲しいなら、もっと努力して認めてもらおう。それが今やるべき事だと思う」

「そうですよね。落ち込んでなんていられません。もっと頑張らなくちゃ」


 正直あいつらがシャノンちゃんの努力を認めてくれる可能性は低そうだけど、シャノンちゃんいい子だからな。


 こう言った方が、きっと奮起してくれるはずだ。


 あっ、お前ら扉の隙間からなにのぞき見してんだ。


 解散だっつったろ。


 とっとと自分の部屋に戻って寝ろよ! 見世物じゃないんだから!


 でも結局「こんなかわいい子を見下した勇者の野郎を見返してやろう!」「そうだそうだ。どうせなら、魔王もついでに討伐してやろうぜ。あんな野郎には任せられないしな」「おうよ」「そうだな」的な話でもりあがっちまったけど。


 なんてわいわい騒いでいたからなのか知らないけど、その夜から俺達のパーティーメンバーがみるみる新しいスキルを授かり始めた。


 えっ、俺なんかフラグ立てちゃいました!?


 俺、なんかやっちゃいました!?


 なんて、無自覚系やらかし主人公もびっくりするくらいの急展開だな!?


 翌朝そう混乱していれば「私の時も急でした」とシャノンちゃん。


 なんか共通点でもあるかな?

 俺達とシャノンちゃん。


「皆さんの優しさを、きっと神様が見ていてくれたんですよ」


 分からなかったけどシャノンちゃんが元気になって笑ってくれたのでそれでいい気がした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る