第5話 活躍するヒロイン



 ダンジョン 『シャノン』


 勇者様には拒絶されてしまいましたが、私は私にできる事をしようと思います。


 私をパーティーに誘ってくださった人、ジークさんは冒険者のようです。


 ですからジークさん達と一緒に、冒険者として困っている人の役に立とうと思いました。


 でも彼等はお金がなくていつもギリギリの生活を送っています。


 資金があったらもっと出来る事が増えるのに、と呟いていました。


 それで、ご飯も一日一食みたいです。


 私は慣れてるから良いんですけど、たまに本当に主食だけという日もあって、健康が心配です。


 ジークさんなんかは「これあげるよ」と言って、自分の分なのに私へ譲ってくださいますし。


 だから、ありあわせの食事で工夫して調理してみたら、皆さんに喜ばれました。


「これで我がパーティーの食事事情が大幅に改善されるぞ」と言っていました。


 食は大切ですから、改善に貢献出来てよかったです。


 しっかり食べておかないと、いざという時に力が出ませんし。


 そんな日常の中、冒険者の活動をする時には、剛力のスキルがとっても役立ちます。


「えい」っとやっただけで、モンスターたちをやっつける事ができるようになりました。


 私の専門は回復魔法なんですけど、余裕がある時は戦う事もできます。


 でも、私が戦っているとどうしてだか、ジークさんが何とも言えない顔をしてるんですよね。


 たまにジークさんの代わりに荷物を持っている時も。


 一体どうしてでしょう。






 ダンジョン 『ジーク』


 いや、小首傾げて「よっこらしょ」とか重い荷物持ってるけど、俺が微妙な顔になっちゃうの当然だからな。


 なに、「どうしてそんな顔してるんだろう」みたいな心の中が分かりやすい顔してんの。


 男として、情けなくなってくるな。


 それはともかく、めっちゃなじんでんな。俺達のパーティーに慣れるまで、もうちょっと時間がかかるかと思ったけれど、意外とそうでもなかった。


 シャノンちゃん、すごくうちとけるの早い。


 パーティーにいる、攻撃魔法使いや治癒魔法使い、弓使いとか盗賊とかもすぐ仲良しこよししてるし。


 料理できるのがやっぱり良かったのかな。


 あれで、みんなめちゃくちゃ喜んでたし。


 さすがゲームのヒロインだ。


 自己紹介から入って、無害ポジション築きながら地道にパーティーに貢献していった俺とは違う。


 ぜんぜん違うな! 見栄はってシャノンちゃんに食べ物ゆずってみたものの、お腹ならしてバツの悪い思いをした俺とは!


 ちょっと嫉妬しそうになるけど、つい最近可哀そうな目に遭った美少女に、醜い俺の心をぶつけるわけにはいかない。


 嵐模様になりそうな心の中の俺には慎重にステイしてもらった。


 それはともかく、近くの村にはぐれ竜が現れたらしい。


 竜の素材は武器の強化に使えるし、高値で売れるから、さっさと移動しないとな。


 そんな提案をしたらシャノンちゃんが、浮かない顔色になった。


 あっ、そういえば原作では竜との闘いが原因で……。


 あちゃー、酷い事しちゃったかな。


 でも「やめとこうか」って言ったら、「頑張ります」って言われちゃったし。


 一度言った事を引っ込めるのも気にしそうだし、結局やるしかないかなー。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る