第2話 追放現場を目撃した俺
王都の酒場 『ジーク』
俺だ。
おい、それじゃ分からねぇよ。誰だよ。
と、思うかもしれない。
だが、俺だ。
俺、で通すぞ。
まあ、それじゃ本当に分からないだろうから、もうちょっと。
つまり、主人公だ。
俺という人生の、だが。
まあ、この世の中の皆が皆主人公なので、そんな事を言われても戸惑うかもしれないが。
つまりあれだ。
なんだ。
そういう存在だ。
説明めんどい。
なんか、前世の俺がうっかりヘマしちゃったみたいで死んじゃったみたいだな。
エレベーターの中でぽっくり逝った。
え?
そんな所で何があったんだって?
ばかっ、恥ずかしいから言えるかよっ。
で、そのぽっくり死んだ後になんか白い世界に行っちゃってさ、そこにいたうさんくさい女神みたいなの話してたら、流れ作業的な感じで異世界に来てしまったんだが。
それで、そこが前世で大ブームを引き起こした乙女ゲームの世界だったから、びっくりしたよ。
乙女ゲームってあれだろ?
恋愛するんだろ?
ヒロインと攻略対象が。
そんな世界に男である俺が放り込まれたって、困るだろ。
しかも主人公でも、攻略対象でも、それらの友人でもないんだから。
何のための転生なんだよって思うだろ。
女神は「貴方が適任ですから」とか言ってたけど……。
前世の記憶が蘇った瞬間は、実際、めちゃくちゃ思ったよ。
俺、なんで転生させたし。
って。
でさ、そんな事考えてても、飯が食えるわけでも、金が増えるわけでもない。
なら、何かしらの行動に出るしかないだろ。
そういうわけでな。
あれだ。
めちゃくちゃ頑張った。
小さなお手伝いからコツコツ、みたいな?
身元不明でもなれる何でも屋とか冒険者になって、色々やってみたよ。
俺、捨て子だったんだ。
気が付いたら、なんか生きてたし。
どういう状況だよって話だけど。
そんでがむしゃらに生きていた俺は、努力のかいあってちょっとだけ有名になって、今ではそれなりの暮らしができるようになった。
やればなんとかなるもんだな。
でさそんなだから、忘れかけてたよ。
日々の暮らしがいっぱいいっぱいだったからな。
何がってゲームだ。
乙女ゲーム。
主人公が恋愛して、攻略対象を落とすだの落とさないだのするやつ。
そのイベントが、気がついたら発生してたんだよ。
このゲーム、大人しい恋愛ゲームじゃなくって、ファンタジー冒険要素があったんだ。
ここまで言えば分かるだろ、なんでわざわざこんな話をしたかって。
いるんだよ。冒険してる主人公(女の子)がさ、目の前に。
酒場で俺が今組んでる冒険者パーティーの仲間達と酒飲んでたら、すごい見覚えのある顔が目に入って。
目を奪われちまった。
仲間なんかは冷やかしてたけど、そういうあれじゃねーって。べっ、別にそんなんじゃないんだからねっ(お約束)。
ゴホン。
じっと、見てたら視線の先があれよあれよという間に不穏な空気になっててさ。
主人公が仲間達からきつい事言われて、パーティー追放されてたってわけだ。
あんまり不憫だからつい声をかけちまったけど、余計なおせっかいだったかもな。
毅然とした態度で断られちまった。
やっぱり主人公だから、そんな事ではへこたれねーのな。
色々仲間に言われている時だって、涼しい顔してたしな。
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