第1話 追放されたヒロイン



 王都の酒場 『シャノン』


「回復魔法しか使えないお前は役立たずだ。レベルも低いし、守りながらじゃろくに前に進めないんだよ。俺達のパーティーから出ていけ」


 勇者様は、私を一瞥して目の前からいなくなりました。


 私、シャノンはもう、勇者様達と一緒に戦う事ができないみたいです。


 悲しくて涙が出てきました。


 数日前私達は、竜と戦いました。


 一応、危なげなく勝利しましたし、怪我もなく戦いを終える事ができましたが。


 その時竜の攻撃を受けたせいで、一時的に治癒法使いなのに魔法が使えなくなってしまったのです。


 それで、パーティーのお荷物になってしまったんです。


 無力で無価値な存在になり果ててしまったこんな私が、勇者様のパーティーから追放されるのも無理がありません。


 悲しいですけれど、勇者様や他の仲間達をひきとめる事ができませんでした。


 勇者様には、魔王を倒して世界を救うという使命があるのですから、それを邪魔する事なんて……。


 でも、これからどうしましょう。


 小さな村に立ち寄られた勇者達が声をかけてくれて、私の治癒魔法を褒めてくださったので、彼等のお手伝いができるとはりきって故郷を出ましたが……。


 それなのにこんな結果では、とても村の皆には顔向けできません。


 困ってしまいます。


 しょんぼりしていると、そんな私に声をかけてくれる人がいました。


 困っているなら自分達のパーティーに入らないかと、誘われたみたいです。


 きっととても優しい人なのでしょう。


 困っている私を見かねて手を差し伸べてくださったにちがいありません。


 けれど、私などが入ったらお荷物になってしまいます。


 丁重にお断りしてその人達から離れました。


 今回の戦いで治癒の腕に自信がなくなってしまいました。


 もっと他にとりえとなるものが、力があれば良かったんですけれど。


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