テーアイ飛空012便墜落事件⑩:エデ帝国の現在
○レイル=バルタザーレ(カカナ連邦 飛空艇事故調査委員会 テーアイ飛空012便墜落事件チーム主任捜査官(当時))の証言
「012便の事故の後、エデ帝国は違法な部品仲介業者の摘発に乗り出しました。
囮捜査などで業者を逮捕し、彼らから模造品を買った会社のリストを手に入れました。
テーアイ飛空も、その中のひとつでした。
そして帝国公安部は仲介業者を自白させ、その模造品の部品をどこから取り寄せたのか、誰の紹介で買ったのか、飛空艇部品のブラックマーケットに関わる者達を芋づる式に吊し上げました。
ヒョードー屋を始めとした多くの商人が次々に逮捕され、ついに犯罪組織の撲滅に成功したのです。
その過程で、セタ家老への拉致計画が明らかになりました。計画実行者のひとりが司法取引を条件に証拠資料つきで自白したのです。
012便の機長らは、やはりセタ家老を飛行機ごと誘拐するつもりでした。行き先は北方にある、犯罪組織が所有する私有地です。先の下部組織の報復と、脅迫によりキシー藩国が進めている飛空業界の改革を阻む狙いがありました。
……しかし結局のところ、この012便の事件は彼らの影響を抜本的に消し去ることになりました。
キシー藩国トクダ王は大将軍の職に就き、帝国飛空局の大改革を行い、不正の温床であった杜撰な審査と管理体制を刷新し厳格化したのです。
また操縦士の育成を行う国立飛空大学校を設立し、飛空訓練学校への監査も見直されました。
経営状況、教官の質、成績記録の公正さをチェックし、訓練学校としての資格があるのか、仮面訓練生の抜き打ち検査も使って審査しました。その結果、多くの訓練学校が資格を剥奪され閉鎖しました。
こうして、012便の事件は、エデ帝国における飛空産業の大改革を促す契機となりました。
現在のエデ帝国の飛空業界は安全率を大幅に向上させ、めざましく成長しています。
安全と公正を求める者達の強い意志によって、エデ帝国の空は健全なものとなったのです」
※エデ帝国トクダ大将軍は012便事件の解決に尽力した調査チームを讃え、メンバー全員に曙光双輪章を授与(帝国人以外への授与はこれが初)。
対象者にはアキラ=ムラセも含まれる。
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